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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

弊社のパワハラも御社のパワハラもなぜなくならないのか?

今年の5月にパワハラ防止法案が成立して、来年にも施行される予定です。

今回の法案では「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されること」と定義された事が画期的なようなのですが、おそらく業務上必要な範囲を超えてという部分が、パワハラ事案が発生した場合の争点になりそうです。

さて、話は少し変わりますが企業ではどういう人が出世していくのでしょうか。

規模が大きくない会社だと社長の知り合いがいきなり役員で来ることがあるケースもあると思いますが、未だ多くの会社では新卒で会社に入って同期よりも成果を上げて、徐々に頭角を表すという出世の仕方はまだまだあると思います。

ドラッカーはマネジメントで圧倒的に大切なのは時間であると言っています。よく優先順位をつけろと言うことは言われますが、それよりも劣後順位が大切で、要するにやらない仕事を決めてから優先順位をつけるべきだという事を著書の中で示しています。

社会人にとって時間は圧倒的について重要な要素な訳ですが、僕の知っている限り成果を出している社会人は働き方改革の時代にあってもかなりのハードワーカーばかりです。

知り合いのコンサルの方は土日にメールしても必ずその日中に返信がありますし(土日メールする僕も良くないですね、反省です)、弊社でも成果を出している人間は未だ軒並み残業時間が長い人間が少なくないですが、昨今の働き方改革の流れがあるので、どうも家に持ち帰って仕事をしているのではないかと疑っています。

優秀な社員は前例のないミッションを与えられている事が多く、新しい事にチャレンジする場合はどうしても時間がかかります。試行錯誤とは言い方は悪いですが時間の消費と同義でもあります。

つまり優秀な社員というのは、難題に対して自分の能力や時間を含めたリソースを全投入して圧倒的な成果を上げる社員です。会社にとっても貴重な存在で、当然出世していきます。

このような優秀な人材がスタッフの時はまだいいのですが、課長、部長、役員と出世していく中で、部下を使って仕事をするようになります。

優秀な管理職の全員が全員ではありませんが、一部の優秀な管理職は部下のリソースを限界まで使って成果を上げようとします。

さらに優秀な管理職の中の一部には、優秀であるが故に自分の中で仕事の進め方のストーリー展開が決まっており、部下がそこから外れる事を許さない困った管理職がいます。またそのような上司に限って完璧主義者です。

いわゆるマイクロマネジメントですが、例えばAという目標達成をする方法はいくつもあり、部下はBという方法で目標に向かっていきたいと考えているのに、Cという方法しか許さないというマネジメントをします。僕もそのような上司に当たった時は本当に辟易したものです。

人間は自分の裁量や判断を封じられた時に最もストレスを感じる生き物です。例えば長時間労働をしていても、自分の判断や裁量が確保出来ていれば人は意外に病みません。

上司のマイクロマネジメントにより、自分の判断を封じられ、そこに叱責や長時間労働が重なると人は容易に病みます。

パワハラ問題がなくならないのは、このタイプの上司が手段は何であれ成果を出していると言う事です。部下にとっては厄災以外の何者でもない上司であっても、会社側はありがたい存在と考え続けている場合はパワハラはなくならないと思います。

身体的な暴力やあからさまな暴言はおそらく減ってきていると思うのですが、このように部下を疲弊させて成果を出すやり方にはNOという時代になってきたのだと思います。会社側は問題だと思っていても成果を出しているので見て見ぬふりをせず、成果を出している優秀な管理職は今一度自分のマネジメントスタイルを見直して頂きたいと思います。

日本人はなぜ血液型信仰から離れられないのか

唐突ですが僕はO型です。そしてたまに女子と「えー、割としっかりしてるからA型かと思った。でもやっぱりO型ぽいかも」という毒にも薬にもならない話をしたりする訳ですが、A型しっかり、O型適当、B型マイペース、AB型変わり者みたいな感覚は血液型信仰があるにしろないにしろ、日本人はなんとなく共通理解してるんじゃないかと思うんですよね。これってなんだか凄いことなんじゃないかと思います。

この血液型信仰があるのは、日本と韓国くらいだと聞いたことがあるんですけど、これってどういう事なんだろうかとちょっと考えてみたいと思います。

話は変わりますが、エスニックジョークというのをご存知でしょうか?ウィキペディアから引用しますが、以下のようなものです。

沈没船ジョークの例

沈没しかけた船に乗り合わせる様々な国の人たちに、海に飛び込むよう船長が説得を行う。

アメリカ人「飛び込めばあなたはヒーローになれます」

イギリス人 「飛び込めばあなたはジェントルマン(紳士)になれます」

ドイツ人「飛び込むのはルールです」

イタリア人「飛び込めばあなたは女性に愛されます」

日本人「みんな飛び込んでますよ」

というような感じで、なんかありそうな気がすると思わせるちょっとブラックなテイストも入っているジョークです。

あと、他のエスニックジョークでは以下のものもありますよね。ちょっと今の時代は当てはまらないかもしれないですが。

「ドイツ人が発明し、アメリカ人が製品化し、イギリス人が投資し、フランス人がデザインし、イタリア人が宣伝し、日本人が小型化し、中国人が海賊版を作り、韓国人が起源を主張する」

つまり、民俗的な特徴にレッテルを貼り、ステレオタイプ的に理解をするという事なのですが、日本ではエスニックジョークはあまり盛んではない気がしています。

なぜかと考えますと、日本で外国人労働者はかなり増えていると思いますが、まだまだ単一民俗的だからというのが理由ではないでしょうか。日本人は他者と相対的に自分を見る事に慣れていないような気がします。

さて、またまた別の話なのですが、皆さんはダニエル・カーネマンのファストアンドスローを読んだ事はあるでしょうか?

ものすごく乱暴に言うと、我々サピエンスは人にレッテルを貼って理解したつもりになりたがる生物だと言う事です。(たぶん)

何故かというと、我々のご先祖が狩猟時代に生きていたとき、いつ野生動物や敵の部族に襲われるか分からない訳ですから、いちいち理屈で考えていたら、命がいくつあっても足りない訳ですよね。熊やライオンぽい影を見たらそうに違いないとレッテルをササッと貼って行動する事が行き残る勝ちパターンだったんだと思います。

なので、こういうパターンに遭遇したら、このような理解した方がいいというのが我々サピエンスの脳に刻み込まれており、ダニエル・カーネマンはそれをシステム1と名付けました。

毎日死の危険にさらされている狩猟時代には必要な能力だと思いますが、現代においては完全にイノベーションのジレンマだと思います。

さて、血液型の話でした。

つまり、何か言いたいかと言うと、基本的に同一民族で、似たような思考を持ってしまいがちな日本人は、血液型によってシステム1を起動させて他者との差異を認識する事によって自分自身を安心させているのではないかと思うんですよね。仮説の域を出ませんが。

多民族国家の場合や他国と自続きの場合は日常的に異文化との接触がある中で、システム1による他人のレッテル貼りを民族レベルで行っているので、自国民に対するレッテル貼りをする必要性を感じてないのではないかと思うんですよね。

以上、思い付きのノーエビデンスの記事なのでなんとも言えないのですが、個人的には日本の血液型信仰はそんな所に理由があるのではないかと思っています。

ストライダー→自転車の練習はほぼ正しい

7〜8年前、うちの長男が確か3歳くらいの頃にストライダーを買ったんですが、その時はまだストライダーが出始めの頃だったので、道行く人が「何だあれ?」みたいな感じで振り返って、スピード狂のように走り回る長男をもの珍しそうに見ていた記憶があります。

ストライダーのすごい所は、子供が本来持っているバランス感覚を信じた乗り物だと言う事です。

それまでは3歳くらいの子供が遊ぶ乗り物は三輪車とか、アンパンマンとかの四輪の乗り物とかしかなかったのですが、ストライダーは画期的でした。

ペダルなし、ブレーキなしというある意味大胆な引き算の設計で、バランス感覚と足で前進させる(または坂を下る)という、使い方によっては子供が怪我をしかねない乗り物を世に送り出して大ヒットした訳です。

転んで痛い思いをしないと人間なかなか成長しません。親がある程度は見守りながら、擦り傷くらいはいいんじゃないかと僕は思っています。

そんなこんなで2年くらいストライダーに乗っていた長男は、バランス感覚をかなり身につけたようでした。

そして確か幼稚園の年長さんになってすぐに、ストライダーもだいぶ小さく見えてきて、そろそろ自転車を買ってもいい頃じゃないかということで自転車を買って、公園で自転車デビューしました。もちろん補助輪付きです。

ただ、すぐに長男は「つまらない」と言い出しました。ストライダーでバランスを取りながら乗っていたのに、補助輪がついた自転車では満足が出来なかったみたいです。

奥さんと二人で来ていたので、モンキーレンチを取りに家に戻り、公園で補助輪を外しました。

普通の自転車になったわけで、奥さんと「どーだろーねー」と話した瞬間、ひとこぎ目から長男が自転車に乗る事が出来ていました。

あとにも先にもうちの子が天才かもしれないと思ったのはこの時限りですが、僕自身が幼少のころ、自転車に乗れるようになる為に相当練習したのでかなりビックリしました。

自転車の運転で難しいのは「ペダルを漕ぐ」事と「バランス」を取る事です。この2つを同時に行わないといけないというのが、自転車を練習する子供にとって、最初はとても難しい事なのです。

ただ、長男はストライダーでバランス感覚は何度も転んで身に着けている訳で、あとはペダルを漕ぐ事に集中すればいい状態でした。ストライダーという下積み時代が2年くらいあった事が、ひとこぎ目から自転車に乗る事が出来た秘訣だと思います。

しかし問題もあって、しばらくはブレーキを使うことが出来ず、足で止まろうとする癖がぬけなかった事ですが、これもそのうち慣れて普通に自転車に乗れるようになりました。

なので、ストライダーや類似商品で遊ばせるのは(本人が気に入れば)とても良いことだと思います。

これは仕事をOJTで教える時も使えるメソッドだと思います。作業というものは分解する事が可能です。多くの内容を整理しないまま教えるのではなく、一つ一つに分解して順番を工夫して新人に教えるのが理想的です。

また、部下に3回行ってやらなかったら、要素分解して同じ事をまた3回言うべきという事をよくきいたりしますが、それも同じ事だと思います。

なんでそんな事しなきゃいけないのか、自分は誰も教えてくれなかったと思うかもしれませんが、自分がされて嫌だったことは他人にもしないという気持ちで部下や後輩に接してほしいと思います。

そして、可能性は信じる事、子育ても部下育成も忍耐ですね。

【書評】ママはテンパリスト〜ユーモアの根源は哀しみ

既婚でお子様のいる男性の皆さん、奥様を愛されてますか?毎日感謝の言葉を伝えてますか?ハグしてますか?たまには子供を預けてディナーに行ってますか?

日頃言葉や行動では表せてないけど、いつも感謝してるからうちは大丈夫とか思っているとしたら夫として失格です。大いに反省して下さい。

夫婦といえど、元々は赤の他人。言葉でしっかり伝えないとなかなか伝わらないものなのです。これは本当にしっかり覚えていて下さい。

僕くらいの熟達者になると、会社から帰宅したら「ただいま」「いただきます」「おやすみなさい」の3パターンで成立するスタイリッシュな会話が確立していて、プロ夫婦として無駄のないストイックな生活を送っていますから、いつ妻から離婚を突き付けられてもおかしくありません。

さて、東京タラレバ娘で有名で、私生活も何かと話題の東村アキコ先生の「ママはテンパリスト」です。

子育て奮闘記の本で、2010年には「このマンガがすごい」にノミネートされたり、累積100万部売れたそうで、確かに作者と息子さんのごっちゃんのやり取りが面白いのですよね。

ただ、ちょっと冷静に見ると、状況というのが完全にシングルマザーの子育て奮闘記なんですよね。

この時点では離婚はされてなかったようなのですが別居婚だったようで、旦那さんが出てくるのは1回のみです。

その1回のエピソードで、旦那さんがごっちやんを寝かしつけるというシーンがあるのですが、日頃なかなか寝付かないごっちゃんがいい子にしながらすぐに寝てしまうんですよね。

マンガでは私は苦労しているのに何で寝るんだ?みたいな感じで面白い描写にしていますが、多分別居婚ですし、マンガで登場シーンが1回だけという事は、ごっちゃんはなかなかパパに会えなかったと思うんですよね。

きっと自分がいい子にしていれば、パパはもう少し帰って来てくれるんじゃないかと思って健気にいい子にしてたんだと思うんです。

多分、東村アキコさんもその辺が分かってて、マンガでは敢えて面白おかしい描写にしてるのではないかなと思っています。

また、別のシーンでは、ごっちゃんと怪獣ごっこみたいな事をするのですが、東村さんは本気で相手にするんですよね。これも父親不在で母親が父親役までしているんだろうなと。

シングルマザー状態のネガティブな気持ちもきっとあったと思うのですが、そういう面はあまりださずに笑いに昇華させているのがこの本のすごい所です。

ユーモアの奥にある哀しみは表に出さずに、きっと歯を食いしばりながら漫画を書き、子育てをされていたのだと思います。この本がヒットしたのは、表面上の面白さと、その奥にある東村さんとごっちゃんの寂しさや哀しさやなのかなと思います。

ママはテンパリスト 1 (愛蔵版コミックス)

ママはテンパリスト 1 (愛蔵版コミックス)

【書評】「THE TEAM 5つの法則」にもやもやする件

リンクアンドモチベーションの麻野耕司さんという方のチーム運営に関する本なのですが、エリヤフ・ゴールドラット先生の「ザ・ゴール」と本のタイトルが似てるのと、SNSで評判がよかったのでつい買ってしまったのですが、「ザ・ゴール」で示された、制約理論(生産ラインのボトルネックが全体のスループットを決定する。よってボトルネックを常に探し、市場規模より少し多くの能力を備えて置くことだ)くらいの内容を期待していたのですが、どうも期待しすぎたようでした。

また、所々そうだなーと思う事もあるのですが、全体を通じて何かもやもやするので、そこの違和感を書いてみたいと思います。

僕は人事部で教育的な仕事をしており、選抜的な研修のグループワークでものすごい成果を出すグループと、空中分解寸前のグループまで50グループ近く見てきたのですが、そこで経験的に気付いたのはリーダーの重要性です。

格言的な言い方をすると「チームはリーダーの能力を超えられない」という事になるのですが、たとえ研修であっても、チーム内の役割というのは大変重要であって、仮に優秀な人が遠慮してリーダーにならない場合は、チームの力は格段に落ちます。スタンフォード監獄実験が有名ですが、我々人間は定められた役割に従ってしまうという基本的な性質を持っているのだと思います。

ということで、「チームはリーダーの能力を超えられない」という仮説の視点を持って、この本を見ていきたいと思います。

この本は「THE TEAM 5つの法則」の名前の通り、大きくは5つの章から成り立っており、AIM(目標設定)、Boarding(人員選定)、Communication(意思疎通)、Decision(意思決定)、Engagement(共感創造)の5つになっています。

頭文字がアルファベットのABCDEになっている是非はさておき、ひとつひとつ見ていきたいと思います。


AIM(目標設定)
この章では目標設定の重要を説いてるのですが、確かこの本でもこの手の例として出てくる有名な話で、教会を建設する為にレンガ積みをしている作業員に対して、「何の仕事をしてるんですか?」と聞いたときに、ある作業員は「レンガをつんでいるんだ」と答え、またある作業員は「人々が祈る場所を作っているんだ」と答えましたという有名な例え話があります。

同じ作業でも目的意識でモチベーションが全然違ってくるという教訓なのですが、メンバーひとりひとりが勝手に崇高な目的に気が付いていたら苦労は無い訳で、誰が目標設定をしているかというのが大変重要と言う事を伝えたいという章なのだと思うのですが、これはまさにリーダーの仕事だと思うのです。

それが気になってこの章で何回リーダーという単語が出てくるか数えたのですが、たった1回です。しかも以下の文脈で用いられているので、純粋にリーダーの重要性を説いている訳ではありません。

("担当編集の箕輪さんから「リーダー以外の人にも役立つ本にしましょう」"という部分)

うがった見方をするのは良くないですが、リーダーという言葉をあえて避けているような気もします。

これが僕の感じたもやもやの理由のひとつなんだと思います。


Boarding(人員選定)
チームは必ず4つのタイプに分類する事が出来、それをサッカー型、野球型、柔道型、駅伝型と分類されていて、ほんまかいなと思うのですが、僕が勤めているメーカーの生産部門は駅伝型に分類されています。

何故なら生産計画は中長期的に立てられ、短期的にはコロコロ変わるものではないという事なのですが、人材育成に熱心な企業は現場の改善に取り組んでおり、QC活動も実施している訳です。紋切り型に駅伝型と称されるのも違和感がありますが、駅伝型は従来の日本企業によく見られていたというような悪い例で使われています。

一方、称賛されているのがサッカー型で、要するにフレキシブルに戦うと言うことを言いたいのだと思いますが、本当に客観的な考察かというと、ちょっと違うのではないかと思います。

これは麻野さんご自身の成功体験として、リンクアンドモチベーションで新記事業を立ち上げの時に、外部やフリーランスの方に活躍してもらった経験から来ているものでしょう。

また、そのようなメンバーの人選は主にリーダーと言いますか、マネージャーの仕事です。

この本を読んでじゃあこれからはサッカー型だと思ったとして、どのように外部の力を活用するかはリーダー(マネージャー)でなければ出来ません。

また、適材適所、フレキシブルだからこそ、以心伝心は通用せず、しっかりした説明や外注管理が必要な訳で、例は申し訳ないですが、ヴィッセル神戸みたいにスター選手を集めても勝てないサッカークラブもあるように、サッカー型だからいいのではなく、よい監督(リーダー)が大切だと思うのですが、この章でもリーダーという単語は1回も出て来ません。

あと、サッカーの例はバルセロナのメッシを出しているのに対し、野球は巨人のV9時代を例に出してメンバーが固定化されていると理屈付をしていて、50年前を例に出すのはちょっと、、と苦笑してしまいました。


Communication(意思疎通)
コミュニケーションは範囲が広いので、この章に書かれてることもいろいろあるんですが、ルール設定の粒度、権限規定のルール、責任範囲のルール、評価対象のルール、確認頻度のルール、相手を深く知ってないと良質なコミュニケーションは成立しない、モチベーションタイプ毎の対応が必要、心理的安全性の確保なのですが、やはりリーダーの心得と言えます。

この中でひとつ注意したいのが心理的安全性です。グーグルがプロジェクトアリストテレスの中で成果を出すチームを分析して導き出した特徴の一つなのですが、要するにメンバーが安心して物が言える環境を作ると言うことです。

これは基本的に優秀なエンジニアしか採用しないグーグルだから特に成り立つ法則であって、これを普通のチームで実践するとどうなるかと言うと、レベルの低いメンバーの発言も安全生確保のために重要になってきますから、議論のスピードは絶対に落ちます。

優秀ではないメンバーをどう扱うのか、成長させていくのは永遠の課題ですが、グーグルやネットフリックスなどの超一流企業を除くと、短期的な心理的安全性の確保はアウトプットの質をさげると思います。(人材育成のために全て分かっててやるならいいとは思いますが)

あと、失敗事例共有とか、反論機会の設定などはいいと思いますが、これもリーダーが公平でメンバーからの信頼があり、本質を突いた応答が出来るかどうかが重要なのではないかと思います。


Decision(意思決定)
この章はやや異色で「正しい独裁はチームを幸せにする」とか、今までの流れをぶった斬る感じが個人的には好きなのですが、これもおそらく麻野さんの成功体験なのでしょう。会社は学級運営ではなくて、営利組織なのですから。

ただ、悪い独裁になってしまわないような歯止めのかけ方をどうするのかというのは大変重要だと思います。


Engagement(共感創造)
この文脈でのエンゲージメントとは、会社と従業員との広い意味での約束であって、従業員側としては、会社の理念に共感して高い貢献をするというような事だと思います。

その中で従業員のモチベーション維持について、多く言及されているのですが、個人的な経験としては、仕事の裁量の割合を増やせば基本的にモチベーションは上がります。(達成不可能なノルマ設定はしない前提ですが)

本書の中では、Philosophy(理念・方針)、Profession(活動・成長)、People(人材・風土)、Privilege(待遇・特権)がモチベーションに大切だと説かれています。

ただ、Privilegeを重視しているメンバーがいるとして、パフォーマンスが期待に達したり、そうでなかったとしてそのメンバーだけに、メリハリのある報酬体系を作るというのは無理ですし、あまり現実的ではないかなと思いました。

また、なんとなくですが、上記の4つのPは比較的若手の男性社員イメージしたような特徴な気もします。

チームにはモチベーションが高くない年配社員や、定時で帰りたい社員もいると思います。

そもそも低エンゲージメントのクラスタは対象外としているように感じられるので、別の章ではダイバーシティが重要と言いつつ、ちょっとひっかかります。

また、章の後半で感情報酬が重要であるとの記載がありますが、感情報酬の設定はいわゆるブラック起業のやりがい搾取に容易に結びつきますから、設定する側もされる側も注意が必要です。


まとめ
本書はチーム運営に関してオリジナルな主張はあまりなく(チームをスポーツの4つに分類するのが目立つくらい)、既視感が多いものでした。

また、このエントリーの最初に書いた、チームはリーダーの能力を超えられないという仮説については、本書はチームについての本であるため、可能な限り避けて書いたのではないかという印象です。(但し、意思決定の章でブレてしまってますが)

この本でとても残念だと感じたのが、著書の方がチームの法則で日本を良くしたいという想いがあるにも関わらず、チーム運営のテクニックという手段を目的化してしまっており、ノウハウ本の枠組みを超えることが出来なかった事です。

同じ幻冬舎の本でも前田裕二さんのメモの魔力は感動を感じましたが、この本にはそれはありませんでした。(そこまで求めるのは酷かもしれませんが)

また、法則に徹するならデータ重視で徹底的に理屈を書いて欲しかったのですが、経験則の域を出てないかなと思います。

本書は、この手の本を読んだことがない学生さんや、若手3年目くらいまでで、この手の本を何冊か読んだことがある方は、「ティール組織」とか「学習する組織」とか、読むのに難儀する本の方が為になると思います。

幻冬舎さんはSNSを含めてマーケティングがとても上手なのでつい買ってしまうのですが、簡単に読めるものは、すぐに役立たなくなるなーという事をあらためて学びました。

最初の話に戻すとやはりチームはリーダーが重要だと思いますし、スキルやノウハウはベースとして必要ですが、パッションとか、メンバーを尊重すると姿勢とか、総合的な人間力がとても重要だと思います。

THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

【書評】統計学の図鑑

統計学の知見からうまれた言葉で好きなのは「異常値は標準に回帰する」という格言です。

どういう事かと言いますと、例えばゴルフ大会をTVで見てる時に、初日に自己ベストでトップに立った選手がいたとします。そうすると解説の人が「この調子を継続して欲しいですね」と言うようなコメントをする事があると思います。

特に変な事は言っておらず、その通りかなと思う訳ですが、統計学の知見があると、「自己ベストとは異常値とも言い変えられますから、2日目以降はスコアが落ちるはず」となります。

もちろんTVでそんな事行ったら興醒めなので、仮に知識があっても言わないと思うのですが、後者になる確率は高いわけです。

また、2018年に北陸では50年ぶりに大雪が降ったのですが、翌年は雪が全く降りませんでした。特に被害が大きかった福井県は次の大雪への備えに頭を悩まされていると思うのですが、統計的に見ると次の大雪は50年後ですから、そこまで急いで対応して財政を悪化させなくてもいいような気がします。

しかし大雪という異常値が続かないと言い切れる事も出来ません。人命が関わる問題はとても難しいと思いますが、限りある財源ですから、いずれにしても冷静な議論が必要だと思います。

そんな訳で統計的な知識はとても役に立ち、ビジネス紙でも時折統計学の特集が組まれますが、何故かブームにはならず、あまり盛り上がらない印象があります。そしてブームも言ってみれば異常値ですから、その内沈静化=標準に回帰してしまう訳ですが。

ブームという話で続けますと、母集団の属性が変化して一過性のブームと思われていたものが定着することはもちろんありえます。例えば、スマホも最初は一部の人のブームだった訳ですが、今は持ってるのが普通だったりするので、上記の格言は当てはまりません。

「異常値は標準に回帰する」は、いわゆる正規分布を描く事象に適している格言です。統計学の偉大な発見のひとつはこの正規分布の発見です。

身長や体重、ニワトリの卵の重さ、お財布に入っているお金、工場で作った製品の不良率、これらはおそらく全て正規分布を描きます。

統計学はこの正規分布をどの様に活用するのかという事を発展させてきたという側面がある為に分かりにくくなってるのではないかと個人的には思っています。

特に僕がまだ完全に理解出来ていないのが検定です。

検定は、ある仮説を立てたとして、それが成り立つ可どうか確かめるための統計的手法なのですが、仮説を確認するためには確認する対象が必要な訳です。

つまり、確認対象として否定したい仮説を設定する必要があり、それを「帰無仮説」と呼びます。そして、新たに証明したい仮説を「対立仮説」と呼びます。

その上で検定行うのですが、ここから先は僕もまだ勉強中でうまく説明が出来ません。

そんな訳で統計学に関する本は何冊か買ってみたのですが、この「統計学の図鑑」が1番わかり易いと思います。図鑑だけあって、図が多様されているので、文系の僕でもある程度までは頭に入ってきました。

例えば偏差ですが、これは平均からのバラツキなんですよね。僕は偏差値世代なので、偏差とは何か基準の値なのかなと漠然と思っていたレベルだったんですが、バラツキを表す手法というのがビジュアルで分かったりしました。

ただやはり検定あたりから当然難しくなってきますので、ちゃんと勉強しないと分からないですけど、統計学を勉強したいと思ってる人にはオススメの本です。

統計学の図鑑 (まなびのずかん)

統計学の図鑑 (まなびのずかん)

氷河期世代あらため人生再設計第一世代のトリセツ

僕はもろに人生再設計第一世代ど真ん中のアラフォーサラリーパーソンです。

中学生の時にバブルが崩壊し、高校の時に阪神・淡路大震災オウム真理教事件、大学の時に酒鬼薔薇事件、就職が氷河期と多感な時期に時代の不安な空気を思いっきり吸いながら生きてきました。

特に就職活動が悲惨でした。2001年に就職活動をしていましたが、40社受けて、ようやくシステム会社の内定をもらえました。

僕は俗にいうMARCH出身な訳ですが、ゼミの出世頭がNTTデータの子会社、学部に一人Docomoに内定が出たらしいとの噂が駆け巡るくらいのしょっぱい感じでした。また当時僕はマーケティング関係のあこがれがあり、就職活動中に一緒に頑張っていた人がいたのですが、その人はコピー機のメンテナンスの会社に就職し、お互いマーケのマの字もないようなところに就職しました。でもこれはまだいい方で就職せずにその後音信不通になった友達もいます。

また、会社で働きだして3年目くらいに出張で新幹線に乗ってたとき、車内販売のお姉さんが何処かで見たことあるなとおもったら大学の時の知り合いで、なんとなくショックだったこともあります。

そんな平凡な氷河期世代あらため人生再設計第一世代の特徴を書いてみようと思います。

ただ、僕一人の偏った意見なのでご了承下さい。

その1 基本的に冷めている
まず就職活動で躓いて、厳しいスタートをしており、入ったら入ったでまだ昭和の空気が残っていて、残業代がつけられなかったり、会社に対してそもそもあまり期待をしていません。

なので、冷めていると言いますか、会社への忠誠心が低い世代になると思います。

僕も会社を2社ほど辞めてますが、それでも一社目が一番愛着があり、2社目以降には愛社精神はありません。

なので、この世代はドライとか言われますが、会社に対するドライさであって、人間的には苦労してるので、後輩には優しいところもあると思います。

ただ、自分が苦労してるので、人が苦労しててもそんなもんだろうと積極的には助けない側面はあるかもしれません。そう言えば、詳細な時期は忘れましたが、社会人になってからやたら自己責任論が言われていたような記憶があります。


その2 バブル入社組がきらい
世代論で語り過ぎるのも良くないと思いますが、今の50歳くらいのバブル入社組の事が好きではありません。

内定拘束でディズニーランドとかがあったとか、銀座に会社の金でよく行ったとかいう話を聞いたりするんですが、彼らの楽天的で先をよく考えて計画を立てることをせず、時間が解決してくれるだろうと言うような態度を見ると本当に残念な気持ちになります。

また、彼らは飲み会が好きで、調子に乗ったときに宴会芸とかないの?とか言ってきて、ほんと昭和の平和な方々なんだなと思いますね。

人事的にも未だボリュームが多いバブル世代が、そろそろ年齢的には役員に登用される世代になってくるので、ここで人選間違えると会社へのダメージが大きいんじゃないかと思います。


その3 デジタルネイティブ第一世代でもある
大学で情報処理の授業があったり、ネット就活が始まった世代だったりするので、基本的にITにはそこそこ強いです。

また、就活氷河期にはシステム会社は比較的採用意欲が旺盛だったので、この世代のプログラマーやSEの比率はそこそこ高いと思います。


その4 成長意欲が高い世代
基本的に会社を信用してなく、個人として卓越していないと取り残されるとの恐怖感から成長意欲は高いです。でもさらに今の若手はさらにその傾向が強くなってるかもしれません。


僕は運良く就職出来ましたが、フリーターや非正規雇用職業訓練が積めなかった人達に対して、対策を施すという事なのだと思います。個人的な感覚ですが、何か新しい事を身につけるのは45歳まではまだ大丈夫だと思いますが、それ以降はかなり厳しいと思います。

なので今後三年間で集中的にというのは分かるのですが、具体的な支援となるとまずマインドセットから変えてもらわないといけない中で、僕のように冷めていて組織に期待してない人間、そして社会に裏切られたとネガティブな思考を持っている人間の考え方を変えて、尚且つ職業訓練を積んで社会で活躍してもらうのは容易ではないなと思います。身も蓋もないですが。