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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

【書評】NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~

「従業員が力を持っていることを忘れてはいけない。(中略)彼らの力を認め、時代遅れの方針、手続き、制度を廃止して、力を開放することだ。それさえ行えば、彼らはパワフルになる」

僕はNetflixには加入してないんですが、最近TVを買い替えて、リモコンの上部にNetflixのボタンがあるのは気が付いていました。何気なくあるのでスルーしがちですが、これってちょっと凄いことなんじゃないかと思います。例えばこのボタンがMXテレビだったら、「いやそこまで5時に夢中!は見ないしね」ってツッコミを入れると思うんですよね。例えがよくないですが。

何かシステムを構築するときもWEB画面とかで何回のアクションで対象コンテンツに辿り着くかというのを重視しますが、これはリモコンから一発ですからね。これを企画してメーカーに交渉して入れてしまったNetflixの恐ろしさというのはリモコンひとつ取っても容易に理解が出来ます。

この本の著者のパティ・マッコードさんはNetflixで会社の立ち上げから2012年まで人事のトップだった方で、彼女の視点からNetflixについて語られた本です。なのでビジネスモデルとかそういう事はあまり触れられていませんが、スタートアップの立ち上げから大企業になるまでを人事の視点から書かれた本はあまりないのでとても興味深く読みました。

この本を読んで興味深かったのが、NetflixはITバブルの時に経営が厳しくなって、社員の三分の一を解雇した大変厳しい時期があったのですが、優秀な人間だけが残ったので少ない人数で逆にシゴトのスピードが早まったというエピソードです。

普通の会社ではどのマネージャーも人が足りないと言いがちですが、その前提は優秀な人間です。僕の感覚値でも優秀な社員はそうでない社員の2倍くらい仕事をこなしています。なので、中途半端な人材を2人雇うよりもハイパフォーマーを2倍の年収で1人雇った方が理に適っていると思いました。実際Netflixでは、新しい人材を2人雇うよりも2倍の経験を積んだハイパフォーマーを一人雇ったほうがよいという方針が浸透しているようです。

また、この本を読んでいく中で頭でもやもやしだしたのが、Netflixティール組織なのか?と言うことです。結論から言いますとNetflixティール組織なのではなかろうかと思った次第です。

よくティール組織は生命体という表現がされますが、Netflixは「会社はチームであって家族ではない」という比喩を使うそうです。例えば、Netflixは会社を立ち上げ当時は困難もありながら、駐車場でピクニックテーブルを広げながら会議をしたり、スタートアップならではの家族的な雰囲気があったという事なのですが、50名程度の規模の会社で活躍できる人間とグローバル企業で活躍できるタイプは異なる中で、創業期のメンバーに正直にそのことを話して辞めてもらったり、優秀な社員であってもそのチームの仕事そのものが会社からなくなってしまった場合はそれも正直に話してメンバーに辞めてもらうそうです。

要するにチームを会社の各機能と考えたときに、会社に不要となった機能は新陳代謝すると言うことで、新陳代謝というと聞こえはいいですが、要するに解雇ですから、苛烈な文化を持っていると思います。

また、従業員ひとりひとりが事業を理解して、双方向のコミュニケーションを重視する点もティール組織の文化と一緒だと感じました。

さらに、徹底的に正直になるというのもNetflixの特長のひとつで、何か問題が起こったら従業員が上司同僚部下に関わらず当事者同士でオープンにありのままを話すそうです。

それと対照なのが何を隠そう僕の勤めている会社でして、他部署のスタッフになにか物申したいときは、上司を通して伝えるようにするという、伝わったのか伝わらなかったのかよく分からない状況になってしまっており、それはこの本にも書いてあるとおり、人を傷付けたくないし、それによって自分が傷つく事はもっと嫌という事なのだと思いますが、何か問題があっても適切なフィードバックがされないのであれば、本人にとっても貴重な学びの機会を逸する訳で、正直に真剣に議論する文化は、しんどい一方で上手く自省出来る人は圧倒的に成長出来ると思いました。

これと同じようなエピソードで、JR九州ななつ星in九州を産み出した唐池恒ニ社長は「半径5メートルで話し合えば分かり会える」と本に書いていましたが、今世界中のあらゆる所で、正直に真剣に会話するという事が会社や社員の成長にとって大変重要であるという事が同時発生的に学びとして広がっており、そのひとつのまとめ方がティール組織であり、ティール組織であることが優れているのではなく、そのような大きな潮流をフレデリックラルーさんはティール組織として世に問うたのだと思いました。

すみません、話がやや逸れましたが、もう一つ印象に残るエピソードは、NetflixのCEOのリードさんです。大きく対立していたエンジニアがいて、その解決のために二人で公開討論させたことがあったそうなのですが、その時にそのまま討論させるのではなく、相手の意見をそれぞれ言い合わせるという討論にしたそうです。確かにそうすると相手の意見もよく学ばないといけないわけで、突拍子もないように見えてとても優れたソリューションだと思いました。突き抜けて優秀な人は、ファシリテーターとしても超一流なのだと驚かせられました。

また、もうひとつ最後に驚いたのが、上記の通り、いくら優秀な人材であったとしても、Netflixでの役割がなくなった場合は退職してもらうという文化について、著者のパティさんも自らの役割が終わったと感じ、14年務められた会社を辞められた事です。有言実行とはまさにこの事ですね。

最後に長くなりますが、以下を引用します。とにかく働き方について疑問を持っている方にはお勧めの本です。

「マネージャーが受け入れがたい真実を繕い、従業員の解雇を最後の瞬間まで引き伸ばし、部下を望まない職務や会社に本当は必要でない職務に縛り付けても、誰の為にもならない。こうしたことの結果、本人だけではなくチームまでもが無力化し、やる気をそがれ、心を蝕まれる。従業員は自分の将来性について本当の事をリアルタイムで知る権利がある。(中略)真実を告げるには練習と勇気がいる。それにあなたの人間力を磨く必要がある。これは完璧にできるようなことでは無いから、今すぐ始めよう!」

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く

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