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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

【書評】ファンタジーランド(上)狂気と幻想のアメリカ500年史

「自分が信じていることが正しいと思っているのであれば、それは正しい。」(本文から)

僕はアメリカ人の知り合いはいないのですが、GAFAはすべてアメリカの企業ですし、アメリカ人はとても合理的なのかなと漠然と思ってました。

しかし一方で進化論とかを信じない人もいるみたいで、聖書に書いてあることは全部正しくて、人類の歴史は7000年くらいしかないと信じてたりとか、なんと言ってもトランプさんを大統領に選んでしまった国ですから、なんかよくわからないなと思ってこの本を手に取った次第です。

結論から言うと、合理的な思考をするような層と、聖書に書いてあることが全部現実だと思っている層がそれぞれ存在している国がアメリカなんだと思った次第です。

アメリカという国の成り立ちとしても、そもそもプロテスタントは、カトリック権威主義的な傾向への批判があって、キリスト教徒一人ひとりが真実が何かを見きわめるべきであるというような思想を持っていて、さらにその急進的な過激派がピューリタンだったようですから、ご先祖からして思い込みが激しい人たちだったのだと思います。インディアンを虐殺しながら西進するのを Manifest Destinyって言ってしまうお国柄ですからね。

本書の中で個性的な人物が何名も出てくるのですが、特にアン・ハッチソンという女性のエピソードは印象に残ります。熱心なピューリタンの信者だったのですが、カリスマ性があり、次第に気に入らない聖職者の話を聞かなくなり、自分自身が説教をするようになっていったそうなのです。どうも自分が直接的に神の啓示を受けたという確信があり、聖書以外の本を読む必要性がなく、自分が感じた真実は何よりも重要という思考を持っていたそうで、反知性主義アメリカの宿痾なんだなあと感じた次第です。

そういえば、昔母親がスピリチュアルにハマりかけてちょっとやばかった時にシャリーマクレーンのアウト・オン・ア・リムという本が家にあった事を今思い出しました。シャリーマクレーンの遠い御先祖を辿るとアン・ハッチソンに行きつくかもしれません。

本書はアメリカ人はそもそも思い込みが激しいというか、幻想を抱きやすく、確信を持った信念に反する不都合な事実は無視し、Post Truthとよばれる現在の下地は建国の歴史からして既にあったという事を論じています。

きっと恐らくそうなんだろうなと思うのですが、アメリカの歴史を全て誇大妄想的な国民性と結び付けて語りすぎてるのかなとも思いました。

あと、前半のエピソードは割と丁寧なのですが、1960年代になるとたくさんの事例が出てきてあまり深い考察はなく、著者個人の経験や感想も入ってくるので前半のほうが面白かった印象です。