【書評】ママはテンパリスト〜ユーモアの根源は哀しみ
既婚でお子様のいる男性の皆さん、奥様を愛されてますか?毎日感謝の言葉を伝えてますか?ハグしてますか?たまには子供を預けてディナーに行ってますか?
日頃言葉や行動では表せてないけど、いつも感謝してるからうちは大丈夫とか思っているとしたら夫として失格です。大いに反省して下さい。
夫婦といえど、元々は赤の他人。言葉でしっかり伝えないとなかなか伝わらないものなのです。これは本当にしっかり覚えていて下さい。
僕くらいの熟達者になると、会社から帰宅したら「ただいま」「いただきます」「おやすみなさい」の3パターンで成立するスタイリッシュな会話が確立していて、プロ夫婦として無駄のないストイックな生活を送っていますから、いつ妻から離婚を突き付けられてもおかしくありません。
さて、東京タラレバ娘で有名で、私生活も何かと話題の東村アキコ先生の「ママはテンパリスト」です。
子育て奮闘記の本で、2010年には「このマンガがすごい」にノミネートされたり、累積100万部売れたそうで、確かに作者と息子さんのごっちゃんのやり取りが面白いのですよね。
ただ、ちょっと冷静に見ると、状況というのが完全にシングルマザーの子育て奮闘記なんですよね。
この時点では離婚はされてなかったようなのですが別居婚だったようで、旦那さんが出てくるのは1回のみです。
その1回のエピソードで、旦那さんがごっちやんを寝かしつけるというシーンがあるのですが、日頃なかなか寝付かないごっちゃんがいい子にしながらすぐに寝てしまうんですよね。
マンガでは私は苦労しているのに何で寝るんだ?みたいな感じで面白い描写にしていますが、多分別居婚ですし、マンガで登場シーンが1回だけという事は、ごっちゃんはなかなかパパに会えなかったと思うんですよね。
きっと自分がいい子にしていれば、パパはもう少し帰って来てくれるんじゃないかと思って健気にいい子にしてたんだと思うんです。
多分、東村アキコさんもその辺が分かってて、マンガでは敢えて面白おかしい描写にしてるのではないかなと思っています。
また、別のシーンでは、ごっちゃんと怪獣ごっこみたいな事をするのですが、東村さんは本気で相手にするんですよね。これも父親不在で母親が父親役までしているんだろうなと。
シングルマザー状態のネガティブな気持ちもきっとあったと思うのですが、そういう面はあまりださずに笑いに昇華させているのがこの本のすごい所です。
ユーモアの奥にある哀しみは表に出さずに、きっと歯を食いしばりながら漫画を書き、子育てをされていたのだと思います。この本がヒットしたのは、表面上の面白さと、その奥にある東村さんとごっちゃんの寂しさや哀しさやなのかなと思います。
- 作者:東村 アキコ
- 発売日: 2008/10/17
- メディア: コミック