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さぷログ

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【書評】関ヶ原(中)司馬遼太郎

最近歴史好きになったので今更ながら司馬遼太郎の本を読んでいるんですが、関ヶ原(中)で特に印象深いのは、細川ガラシャの非業の最後です。

明智光秀の三女である玉子(後の細川ガラシャ)はめちゃくちゃ美人だったそうなんですが、夫の細川忠興が今で言うところのモラハラ夫で、庭師がガラシャ夫人と話しただけで「無礼者!」と首を切ったと言うほどのとんでもない人物だったみたいで、今だったらSNSで大炎上するのではないかと思います。

そんな訳で人質になるくらいなら死ねというくらいのサイコパス忠興さんの言付けもあって、石田三成の人質作戦で細川ガラシャが捕らえられそうになった時に有名な悲劇のエピソードが発生してしまうのです。

『少斎は薙刀を頭上にかざし、しずかに、しかしするどく伽羅奢の乳房を刺した。瞬間で伽羅奢の生命は止まった。(中略)建物は、ことごとく焼け崩れ、天に立っているものといえば黒く焦げた樹木だけしかない』

ここまで読んで、「はてな?」と思いました。当然細川ガラシャは亡くなり、胸を刺した小笠原少斎も屋敷に火をつけて自害しています。屋敷はほぼ焼け落ちている訳です。当事者死亡で現場も焼けてしまっている訳で、詳細な証拠は残っていないはずです。

胸を刺されたというのが本当に事実なのかと思ってググってみたんですが、胸を刺されて死んだとは証明されておらず、どうも諸説有のようです。

そうやってこの本をあらためて捉えてみると、他のエピソードもホントなんだろうかという疑心暗鬼になってしまうんですが、読み物としては大変面白いんですよね。

真面目すぎて融通がきかない石田三成、主君思いの策士で大胆不敵の島左近、用意周到で抜け目のない徳川家康、家康の謀臣の本多正信など、キャラがやたら立っていて、いきいきと動き回る様子がとても魅力的でついついページをめくってしまいます。

また、小説なんですが、所々で司馬遼太郎本人が本筋とは少し外れたエピソードを挟んだりして史実風に進んでいくので、読んでるとあたかも確定している歴史をちょっと脚色しているのかな?くらいなイメージで読み進めてしまいますが、どうやら創作も相当あるのではないかと思った次第です。

歴史家は司馬遼太郎の本を禁書にしたいと言ったというような話もネットに書いてありました。

関ヶ原は文句なしに面白いのですが、史実を参考にしたエンターテインメントであるくらいの認識で読んだ方がいいんだろうなと思いました。

関ヶ原(中)(新潮文庫)

関ヶ原(中)(新潮文庫)