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さぷ日記、主に本の書評

メーカーの人事部門で人材育成関係の仕事をしてます。仕事がら組織とか戦略とかの本の書評が多めです

熱血社員は不要であると思う話

弊社でも残念ながらメンタル不調者が一定数います。メンタルが発生するケースで多いのは、上長の指導や組織の運営方法に耐えられない部下という構図が一定数ある訳ですが、メンタル不調者の上司にはある法則がある事を発見しました。

それは、メンタル罹患してしまうパワハラ上司には過去選抜研修を受講した優秀者がかなりの割合でいるという事です。

どういう事かと言いますと、今どき珍しく熱血で、昼夜をとわず働き、しかも同期に比べて圧倒的な成果をスタッフ時代に上げているような人物は選抜研修の受講対象者になるという事です。

ただ、名プレーヤーが名監督にならないのはどの世界でもあるのだと思うのですが、1番最悪なケースは、部下に自分の仕事のやり方を1から10まで完全にトレースさせるケースです。

人間はある程度の長時間労働には耐えられると思っていますが、自分がコントロール出来る裁量を失うと急激にメンタルが悪化すると思っています。

人間は生まれたときから自分の欲求を通そうとし、死ぬ直前まで自分で意思決定したがる生き物です。赤ちゃんが不快で泣き叫ぶのも、老人が頑固なのも我々サピエンスの本能です。長かった狩猟時代、自分の一瞬の判断が生死を分けるような中で我々の祖先が進化してきた中での宿命のようなものだと思ってます。

ですので裁量を失った状態での長時間労働が一番メンタル的にキツくて、上司の求める正解を当てに行くという作業というのはとても前向きになれるものではありません。

また、この手の上司は、完璧主義であることも多くて、パワポの1ピクセル、資料の色み、ホチキスの留め方等々独自の美学とこだわりがあり、スタッフ時代に自分の意志で実行しているのならよいのですが、管理職の立場で部下にそれを強いると、今では完全に過剰品質ですし、働き方改革に逆行しているのではないかと思います。

さらに、この手の上司はフィジカル的にも強いという特徴があります。近くで見てきたこの手の管理職はやたら暑がりでクーラーをガンガンにかけたがる人物が多いのですが、つまり生物としての発熱量がそもそも高いのだと思います。また、週末はゴルフやランニング、自転車の趣味を持っているケースも多くて、冬は冷え症で困っている僕からしたら最早モンスターです。

そしてさらに厄介なのが、会社から認められており、自分は善だと思い込みつつ、他者共感力が低めだと言う事です。

個人的には、人の能力は残念ながら平等ではないと思っています。周囲に優秀な人を何人か知っていますが、勝てる気が一切しない訳です。会議中にパソコンカタカタ打ってたと思ったら、終了後にすぐ議事録を発行していたり、議論が散漫になったり紛糾した時に、ホワイトボードに十字を書いてささっと4象限に分けて、「Aさんはここ、Bさんはここ、Cさんはここにいて、さてこれだけ意見の相違がある中でどこを目指しますか?」みたいな事をさらっとできてしまう人がいる訳です。飲み会の幹事なんかもソツなくこなします。その上で人格者だといいのですが、必ずしもそうだとは限りません。自分が出来すぎるが故に出来ない人の気持ちが分からない人もいます。

さて、このように優秀だが他者共感力が低く、完璧主義で高い目標を求める管理職への対抗方法が部下としてあるのでしょうか。

個人的には残念ながら正面から戦っても勝ち目はないと思います。

会社側としたら組織運営方法にはやや難があるものの、成果は出している場合は積極的には手は打ちにくいものです。

対抗方法としては記録を取ることです。特に音声データは有効です。いくら優秀であっても発言にはボロが出る事はあります。

また、人事部にパワハラ相談窓口もあったりしますが、人事部は基本的に会社の体制を支える組織です。個人的にはあまり期待していません。

割と最後の手段ですが、効果的なのはメンタルクリニックに行って診断書をもらうことです。診断書には拘束力がありますから、上司も人事部も見過ごすことは出来ません。

そして、かなり酷い上司の場合は休職や退職を検討する事です。メンタルを病んでまでするような仕事はないと思います。

ただ、このような上司は転職したとしてもどの会社にも一定の確率でいます。スティージョブズや会社を一代で大きくした人の本を読んでいると、この人かなりひどいのでないかと思う事もあります。一般人とは違うから圧倒的な成果を出している訳ですが、これがパワハラが一向に減らない理由だと思ってます。経営者は多かれ少なかれこういう要素を持っているものです。人がいいだけでは会社は潰れますし、このバランスは大変難しいと思います。

また、これからの人事部はこのような熱血社員に対して、研修や業績評価等で対峙していく必要があると思います。

つまり、成果を上司個人の独自のやり方で達成し、後任が来た場合に再現性が低いものにさせてはならないこと。少子化により人材は極めて重要であり、「お前の代わりはいくらでもいる」という時代ではなくなったこと。管理職は個人のガンバリズムで成果を上げるのではなく、組織の力で成果を上げるように仕組み作りを工夫する事。仕組みは作った瞬間から陳腐化が始まるので次の仕組みを常に考える事など、会社の人材育成と組織運営に明確なメッセージを発していくことが人事部門に求められていると思います。