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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

【書評】FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

弊社の役員会議での発言を聞いていて気が付いたことがあります。事業部とかのプレゼンを聞いたあとに役員が「それってホントなの?」「それやらなかったらどうなるの?」「よくわからないけど、〜なんじゃないの?」みたいな感じでファクトとして語られている事が本当なのか、経営資源を投じて実施すべき内容なのか、あと自分が発言するときに事実関係が不明な場合はその旨を言ってから発言するなど、ファクトを大事にしてるんだなと思いました。

あとよく役員が言うのは「データは複数年で見てトレンドを把握しろ」とか「全体視点で判断しろ」とか「現場で確認したのか?」などですが、データやファクトに対するこだわりが半端なく強いです。

そんな会社の文化にどっぷり浸かっているのでファクトに対するリテラシーは高いんじゃないかと思って本書を読んだのですが、半分は当たっていて半分は外れていました。

著者のハンス・ロスリングさんはスウェーデン出身の公衆衛生学者の方なのですが、データを駆使して世の中は確実に良くなりつつあるということを世界中で講演されてきた方です。

私達は毎日のように事件や地域の紛争、貧困などをニュースやドキュメント番組で見てますから、まだまだ世界の大半は貧しいのではないかと想像しがちですが、確かに50年くらい前まではそのような状況だった国々が今はある程度レベルまで到達しているにも関わらず、先進国の皆さんに3択でクイズを出すと、正解率は3割を下回り、チンパンジー以下であるということをユーモアを交えて私達に訴えかけています。

僕も世界全体で見ると犯罪減り、今は人類の歴史から見ると史上最も安全であるというのはなんとなく知っていたのですが、ここまで良くなりつつあるというのは知りませんでした。

そんな我々の思考はどういう風なクセによって発生していて、どうすれば解消することができるのかという事を10の項目に分けて、考える習慣を身に着けよう(ファクトフルネスを身に着けよう)と提案してくれているのが本書です。

例えば、人間には恐怖本能があり、恐ろしいものには自然に目が行き、恐怖を過大に見積もってしまうという傾向があるのですが、それは狩猟時代だったら、猛獣から逃れるために必要だったかもしれないが、現代人には過剰な本能であり、大切なのはリスクを正確に見積もることで、リスクとは危険度×頻度で表されるものであり、恐怖でパニックになるのは仕方がないが、落ち着いたあとにしっかりリスクを計算しようというような事を提案されています。

また、ハンスさんは世界中を飛び回って病気と闘ってきた方なのですが、ある途上国の病院で勤務していた際、ファクトフルネス的な思考を持って、目の前の患者一人に最大限の対応をするよりも病院外の衛生環境を良くする方が結果として命を救えるというような信念を同僚の医者に話してケンカになったというエピソードがあったりします。

ハンスさんのすごいところは医者でありながら、統計学の造詣が深く、また全体視点で物事を考えるスケールの持ち主だという所だと思います。目の前の患者を救うことも大切だが、目に見えない命も同様に重いという発言や、仕事に対する覚悟としてはエボラ出血熱が発生した時も現地に向かわれて対応に尽力されたというエピソードも納められています。

また、この本を読んでいて思うのがハンスさんの誠実さです。赤ちゃんはうつぶせ寝が良いと言われていた時に、スーパーでベビーカーに乗っていて仰向けに寝ていた赤ちゃんをうつ伏せにしてしまった事への後悔、事実をよく考える事なく判断してしまった事が引き起こしてしまった悲劇などが率直に告白されており、僕も正直フルネスで生きていこうとあらためて思いました。

また、本のいちばん最後の章がまた読後感を複雑なものにしつつ、この本はKindleで読んだのですが、本の終わりにある注釈が全体の2割を占めており、ファクトを担保する情報収集は難儀だと思いましたがこの本に出会えたことを感謝したいと思います。

『世界中のすべての人が、事実に基づいて世界を見る日がいつかやってくるのだろうか?(中略)そんな日がやってきてもおかしくないし、いつかやってくると思っている』ハンス・ロスリング