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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

「逃げるは恥だが役に立つ」の森山みくりから、「私の家政婦ナギサさん」の相原メイへの変化について

家政夫のナギサさん (プティルコミックス)

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逃げるは恥だが役に立つ Blu-ray BOX

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  • 発売日: 2017/03/29
  • メディア: Blu-ray

さぷさんです。心のドラマNo.1は「ビーチボーイズ」です。異論は認めません。

さて、今クールの注目ドラマの一つである「私の家政婦ナギサさん」のヒロイン、相原メイ(多部未華子)ですが、「逃げるは恥だが役に立つ」の森山みくり(新垣結衣)と比較することで、このほんの数年でのアラサー女子の変遷を見て取れるような気がするので、その事について書いてみます。

TBSはドラマ作りに定評がありますから、事前のマーケティングは綿密に実施しているはずです。

公式ホームページから、それぞれのヒロインの紹介文を見ていきたいと思います。

森山みくり(25〜26歳)
「性格は真面目で頑張り屋、人当たりもいいが、時おり突拍子もないことを言うのは父親ゆずり。そして厳しい現実から逃れるように妄想をする妄想女子でもある。
就職活動で内定がもらえず、文系大学院に進み臨床心理士の資格を取得するが、またも全滅。どうにか派遣社員になったのはいいが、すぐに派遣切りにあい現在は求職中。
大学時代の彼氏に 「小賢しい」 と言われたことがトラウマで恋愛にも結婚にも踏み出せずにいる。
そんなみくりを心配した父の勧めで、仕事で知り合った津崎の家事手伝いに就職が決まるが、父の定年退職を機に、一緒に暮らしていた両親が田舎に引っ越すと言い始めたことで究極の選択に迫られる」


相原メイ(28歳)
「製薬会社「天保山製薬」の営業職であるMRとして働くアラサー女性。自他共に認める負けず嫌いで、仕事では入社3年目からずっと営業成績1位を維持している。隙がないので、周囲からは「仕事もプライベートも完璧」と思われているが、実は仕事以外のことはとにかく無頓着で不器用。
家事が大の苦手で、部屋は物で溢れ散らかり放題。家事や恋愛や婚活もしなければと思ってはいるが、全ての時間を仕事に捧げてしまうため結局後回しに。しかし、おじさん家政夫のナギサさんとの出会いを機に、自分の人生と幸せについて考えるようになっていく」


「逃げ恥」は2016年10月からの放送でした。今から約4年前になります。

この間、たった4年ではありますが、高学歴ワーキングプアと言える森山みくりと、営業No.1という相原メイという差は注目に値します。

女性のキャリア志向は4年前に比べるとさらに高まっており、企業側も女性管理職比率を上げるべく、かなり積極的に女性を登用しています。

つまり、このたった4年の間でも女性が実際にかなり活躍されるようになったのではないかと思っています。

とはいいつつも新型コロナウイルスの影響で「逃げ恥」が再放送となり、引き続き話題と高視聴率を叩き出していたので、現実はモザイク状であると言うことなのだと思います。

そして、森山みくりの就職はおそらくリーマンショック後の不況期にあたり派遣切りが社会問題になっていた時代背景と、相原メイはアベノミクスの恩恵があったという差もあるかもしれません。(コミック版の発行はそれより前になる訳なのでたまたまなのかもしれませんが。。)

バブル世代や就職氷河期世代などと世代論の議論が巻き起こる事もよくあるので、個人の実力ではどうしようも出来ず、時代に翻弄されるという事はあると思っています。

そして、ふたりとも心にトラウマを抱えている点は共通していますが、森山みくりはまだ自己実現が達成されておらず、「他者からの承認と居場所探しの物語」であると言えるのではないかと思います。

一方で相原メイは営業でトップの成績を残している中で、トップを取るために「切り捨ててきた大切なものを回復していく物語」であると言えるかもしれません。

そして、「逃げ恥」の白馬の王子様であるところの津崎平匡(星野源)も一筋縄ではいかないタイプですが、森山みくりの承認と居場所を確保し、「ナギサさん」の鴫野ナギサは相原メイの欠落を埋めていきます。もちろん双方共に今どきのドラマであるので、欠点も含めて魅力的な人物として登場しています。

森山みくりから相原メイへの変化は、女性のキャリアとしての成功が当たり前になってきた事への変化の表れと理解する事が出来ます。

そして、キャリアの成功ゆえ、逆に私生活の充実の欠落がアラサー女子の切実な悩みとして共感されているのではないかと思います。

この点、森山みくりが津崎平匡との平等にこだわり、「好きの搾取」という名言まで残した悩みは、相原メイには見事なまでに存在しません。

双方のドラマ共に欠落を回復していく物語の構造を持ちながらも、抱えている欠落は全く異なる事は大変興味深く、繰り返しになりますが、女性のキャリア形成が成功しているのであれば前向きな話ではありますが、それはかなりの代償の上に成り立っていると言う事です。

そして、次のクールは「お金カネ切れ目が恋のはじまり」というオリジナル脚本のドラマだそうです。ヒロインは九鬼玲子(松岡茉優)27歳ということで、TBSの火曜10時にアラサー女子を何としても自局に引きつける執念を感じます。ちなみに公式ホームページの紹介は以下の通りでした。

「モノにも恋にも一途な「清貧女子」。
中堅おもちゃメーカー・モンキーパスの経理部で働いている。お金が正しく使われることに生きがいを感じる玲子にとって天職。玲子がそこまで「お金の使い方」にこだわるのは、昔起きたある出来事がきっかけ。気に入ったものを使い続けて壊れたら「繕う(つくろう)」ことで、より愛着が増すという価値観で生きている。
愛読書は、鴨長明の「方丈記」。鎌倉の民宿をしている古民家で母と二人暮らし。
初恋相手の早乙女を15年間思い続けている」

愛読書が方丈記とはかなりぶっ飛んだ設定ですが、浮き世離れしているようなヒロインなのでしょうか。

そして相手役は三浦春馬さんなのですが、ご存知の通り自死で亡くなられました。打役は立てずに4話で終了するそうです。ご冥福をお祈り致します。