Search Console

さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

【書評】レッドアローとスターハウス

この本は滝山コミューン1974で有名な原武史先生の本です。一年くらいかけてなんとか読み終わりました。レッドアローとスターハウスというタイトルに惹かれて買ったんですけど、レッドアローもスターハウスも本の中での扱いはかなり少ないというある意味驚きのな本です。

原先生は空間政治学を提唱されており、日本の政治の変遷等のやや抽象論で一般的になりがちな研究をもっと具体的にすべきとのお立場からこの本は展開される訳ですが、実際にどういう事になるかというと、団地の自治会の詳細を固有名詞を交えて考察するといった、読者としては予備知識ゼロの場に放り出されて読むのに大変難儀する章がかなり存在するという一般書にしてはかなり特異な本になってしまっていると言えるのではないでしょうか。

また、原先生の西武線と東京西部や埼玉南西部あたりに対する思い入れの強さが本の髄所ににじみ出でいるのですが、西武線には1、2回くらいしか乗ったことがない読者としてはなかなかつらいものがありました。

勉強になったのは中央線沿線や東横線沿線はなんとなく文化の香りがするのに対して、西武線は私鉄の中ではそこそこ歴史がある部類だとは思うのですが、沿線イメージがあまりこれといったものが僕の中でなかった中で、革新系が強めで地域的にも高額所得者といつよりも中産階級が多く、滝山コミューンを生み出す下地はあったのかなあと想像力出来ました。

あと、西武線はご存知の通り堤康次郎が豪腕で作り上げ、アメリカ志向が強い中で、革新系が強い地域になってしまったという歴史のあやがあるというのがこの本のひとつのテーマだと思っているのですが、この内容は各章に断片的に出てくるもののあまりウエイトは占めておらず、もう少しこのテーマで読んでみたいと思った次第です。

逆にこの地域に住んでいたり、西武線ファンならお勧めだと思います。繰り返しになりますがレッドアローとスターハウスはこの地域の象徴だとは思いますが、本の中ではほとんど出てこないのでご注意下さい。

【書評】サブスクリプション 「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

みなさん、サブスクリプションしてますか?僕が今実際にサブスクリプションしているのは、日経新聞DAZNくらいです。広い意味ではアマゾンプライムも入るかもしれません。

DAZNは子供がサッカーを好きになり、Jリーグチャンピオンズリーグを見る為に入ったのですが、そう言えばJリーグが始まった頃は地上波のしかもローカル局Jリーグの中継があったのに、今は有料のしかもネットでしか見れないという時代なので、隔世の感がありますね。

さて、最近はラーメン店で月8600円で食べ放題とか、美容院でも月16000円でシャンプーの定額サービスがあるというくらいにサブスクリプションのサービスがいろいろ注目され始めましたが、この本は2部構成で、第一部でサブスクリプション・エコノミーの到来と言う事で、上で挙げたDAZNも含めて様々な会社の事例が出てきます。

また、第二部ではサブスクリプション・モデルで成功を掴むということで、会計の考え方と組織のあり方について、実際導入するとしたらどのようにすべきかということが書かれており、読後感としては、2冊本を読んだような印象でした。

この本は2018年6月に本国で出版されたばかりなので、翻訳のタイムラグはあまりないのですが、サブスクリプションモデルはビジネス雑誌やTVでも最近よく取り上げられているので、内容に既視感が少々ありました。

印象に残った点は、サブスクリプションモデルは常に顧客を中心に回っているいう部分で、ああなるほどなと思いました。確かに定期購読や定期サービスに入ろうと思ってもらい、一旦入ってもらったら継続してもらい、上位のサービスや別のサービスも注目してもらって、契約してもらえる様に努力するわけですからね。

第一章の事例も当たり前ですが、アメリカの事例が多くて、これを知ってたらきっと面白いんだろうなと思いながら読んでましたが、正直に言いますと何が何でも読んでほしいという本ではなかったですが、サブスクリプションモデルに興味がある方はどうぞという感じですね。

みかんが食えない

みかんが食べられません。アレルギーとかでは無く。

理由を考えてみたのですが、僕が幼稚園の頃から小学校時代くらいまで、ばーちゃんから定期的にいろいろな物が送られて来ていました。

毎回ばーちゃんから中くらいのサイズのダンボール箱がビニール紐でしっかり括られて届くのです。

いつもパンパンにモノを詰めて送ってくれるのですが、箱の中の8割がみかん。残り2割はお菓子とかおばあちゃん特製の漬物とかだった気がします。

そのみかんなのですが、ばーちゃんはみかん山を持っていて、もう売り物を作るのはやめてしまったけど、みかん自体は毎年出来る訳でそれをダンボールに詰めて送ってくれていたんです。

よくスーパーや青果屋で売っているみかん。あれを普通だと思ったらいけません。彼らは手間暇かけて育てられ、市場に出る事を認められられた一握りのスーパースターのようなものです。下草刈りとか、枝打ちとか肥料とかをしっかりして育てないとあのようなスーパースター達は育たないのです。

ではそのような事をしていないみかんはどのような味がするのか、まず皮が分厚くて固いです。そして種がいっぱい入っております。味はめちゃくちゃ酸っぱいです。

我が家はそういう事から幼少の頃はみかんを買うことはなく、僕はばーちゃんちから送られてくるみかんがみかんだと思っていました。母親から「みかん食べなさい」と言われると、出来るだけ小さいものを選んで、皮を向いて食べていた事を思い出します。我ながら神経質な幼少期です。

また、ばーちゃんはダンボールにパンパン詰めて送ってくるものだから、下の方とかよく潰れてしまっていたりして、銅が酸化して緑青色したようにカビたみかんさんがたまに出てきたりして、うええと思いながら捨てたりしてました。今でもあの鮮やかな緑青色を思い出すことが出来ます。

そんなばーちゃんも山に行く元気がなくなり、いつの頃からみかんは送ってこなくなりました。正直ほっとした事を覚えています。

ただ、今になって思うとあんな重いものを自転車で山から運んで、いっぱい食べてもらいたいのでパンパンに詰めて送ってくれてたんだなあと思います。

ありがとうばーちゃん。今でもみかんは食べられないけど。

【書評】大阪的 「おもろいおばはん」はこうしてつくられた

僕は以前大阪で働いていたんですが、この本で出てくる大阪のおばはん(よりはもうちょっとだけ若い)お局様がいらっしゃったのですが、朝たまにこの様なフリがあったら恐怖したものです。

お局様『なあこのバッグ昨日買うてんけど、なんぼに見える?』

僕『え、けっこう良さそうですけど、、ご、5000円くらいですか?(汗)』

お局様『ちゃうねん、500円やってん!(ドヤ)』

僕『え、全然見えませんよ、すごいですね!(汗)』

お局様『せやろ〜!(ドヤ)』

みたいなやり取りがたまにあって、多分ここで10000円と言っても外し過ぎで、1000円だと安すぎなので、5000円は及第点だったんだと思います。大阪で生きていく為には「これなんぼに見える?」のフリは最大限に活かさないといけないという暗黙のプレッシャーがあります。

確かこのお局様は堺出身の方だったのですが、本書で描かれている様な典型的な大阪のおばはんの性格そのものでした。

この方には結構鍛えられたので、今では僕も関西の方に対して「へー、芦屋出身なんですか、海側ですか?」とかさらっと余計な一言を言えるようになって感謝しているのですがそれはまた別の機会に譲るとして、僕の嫁は北摂出身なのですが、また微妙なメンタリティの違いがあって、南のほうとはちょっと一緒にしてくれるな的な所があったりします。

本書では大阪のおばはん像は誇張されすぎていると主張される訳ですが、やや阪神間と言いますか、北摂側贔屓な気がしなくもありません。

また本書のサブタイトルが「おもろいおばはんはこうしてつくられた」なんですが、全九章あるうちの第一章の半分くらいしかおもろいおばはんに触れられていないので、これは幻冬舎さんのマーケティングセンスの賜物ですが、読み終わったあとはちょっとどうなの?という気持ちにならないでもありません。

また、エッセーぽいなと思って読んでいたところ、ほんとうに産経新聞のエッセーをまとめた本で、歴史の話も多く、読後感としては大阪の話に限定した司馬遼太郎さんのこの国のかたちみたいな感じでした。

でも個人的には、元阪神のバースは本来の発音からするとバスだが、デイリースポーツあたりにバス急停車とかおちょくられるのがいやでバースにしたらしいとか(ある意味どうでもいい、すみません褒め言葉です)トリビアを知ることが出来てよかったです。さくっと読めるので息抜きにどうぞという本ですね。

【書評】残業学の残業時間増加による幸福感の上昇は本当なのか?

本書は部分部分では納得できる記述も多いものの、全体的な整合性があまり感じられないので少し読みにくく、また実際企業の現場で同様の問題を対応している立場として、データの解析手法についてもやもやする所がありまして、今回は残業時間が増えると幸福度が増すという調査結果について考えてみたいと思います。

f:id:sapsan:20190109095449j:plain

上記の図が残業時間が増えると幸福度が上昇するとの根拠とされている分析結果のヒストグラムなのですが、なるほど、残業時間が45〜60時間で底を打って上昇しています。80時間から上の区切りはないようなので、また下降するのでしょうが山が2つある特徴的な波形と言ってよいと思います。

ただ、縦軸の幸福感ですが、グラフは16〜19(単位はポイント)まで目盛りが0.5単位で区切られており、実際の値が最高値は18.58で、最低値が16.98なので、この1.6ポイントがどれくらい重大な幸福度の差異なのかはよく分かりません。(設問票は公開されていないようなので)

僕は仕事柄アンケート調査を行い、ヒストグラムもよく作るのですが、上記のような一旦下がってまた上がるようなグラフはあまり目にしたことはなく、グラフがM字型と言いますか、ふた山になってしまった時に疑わなくてはならないセオリーがあるのですが、それは後述したいと思います。

様々なアンケート調査を行う中で経験的に言えるのは以下の定義です。「同一の属性を持つサンプルに対して、ある連続した区間を持つ計量値または計数値を均等に区切り、当てはまるものを選ばせる設問は、基本的に正規分布する」です。

つまり、単純に残業時間や(主観的ではありますが)幸福度合いを聞く質問をしたら、なだらかな山型を描くのが通常のアンケートでよく出くわす波形ということになります。

ただ、このグラフの難しいところは縦軸に幸福度を取っており、このような異なる属性の相関を見る場合は散布図が適切だと思うのですが、見た目の印象が重要なのかヒストグラムを用いられています。

さて、ふた山あるヒストグラムでまず分析者が注意せねばならないのは、異なる属性がサンプルに入り込んでいないかどうかという点です。

この視点でもう一度グラフを見ると、サンプルについては「一般従業員 n=5000」という記述がある事がわかります。

この一般従業員5000名の内訳が知りたいと思い、巻末の実施調査概要を見たところ、2017 年9月末と2018年3月末に全国の従業員数10人以上の企業に勤める無期雇用社員(正社員)、20〜59歳とあります。

そしてまた上記の表に戻る訳ですが、そこでまた気が付くことがあります。グラフの縦の尺度は幸福感な訳ですが、人数に対する表現がグラフではなされておらず、グラフ下のカッコで記載されている点です。ですので、1046名がいる縦棒も138名しかいない縦棒も幸福度の平均値という同じ扱いを受けているという事です。

話が長くなってきましたが、中原先生やパーソル研究所が問題視している残業時間の増加による幸福度が増加しているとこの表から読み取れるのは323名、全体の僅か6.46%です。

ここで言いたいのが(といいますか、これをずっと言いたかったのですが)、この323名は一般職と言いながら、将来を期待されているエース級の幹部候補の一般職なのではないだろうかという事です。(もちろん長時間労働はこの本でも指摘があるように健康にマイナスの影響をもたらしますから良くないのは当然です)

そして、仮にこの323名をエース級の幹部候補と仮定した場合、他の社員よりも幸福度が低いというそれはそれで衝撃的な結果が見えてきます。(あくまで仮説です)

エース級かどうかは設問に設けることは出来ないと思いますので、年収を使えば代替変数に出来ると思いましたが、この本では年収に関する記述は無いのでおそらく設問に含まれていないのではないかと思いました。

一つのグラフにそこまでマニアックにこだわらなくてもいいのではないかという方もいらっしゃるかもしれませんが、中原先生とパーソル研究所の分析結果を信用すると、残業時間長くなると麻痺してランナーズハイになりがちだから、とにかくよくない。と言うのか、それともエース級の幹部候補は会社への忠誠心が高く、残業時間も長いが幸福度は決して高くない。特にミレニアルやさとり世代と言われる若者は自分がその会社で働くこと自体に意味を見出す傾向があるので、彼らが離職しないような工夫が必要である。と言うのでは全く対策が異なってきます。

数字はうそをつきません(ただ、アンケートでうそをつかれる可能性はあります)が、解釈を間違えると的外れの対策を提示してそれが拡散され、結局さほど有効ではないということになってしまいます。

また、上記の仮説も間違えている可能性だってもちろんあります。いずれにしても耳が痛いことであっても健全なフィードバックがなされる事がとても重要だと思っています。

箱根駅伝は新年の奉納の神事であると思う件

箱根駅伝は日本の伝統的な神事なんだなあとふと思ったのでその事について書いてみます。

箱根駅伝はご存知の通り、大手町からスタートしますが、強引ですがほぼ日本橋とさせて頂くとして、品川、川崎、鶴見、横浜、保土ケ谷、戸塚、藤沢、平塚、大磯、小田原、箱根とほぼ旧東海道の宿場町を通ります。そして往路の目的地の先にあるものは霊峰富士山です。

つまり、箱根駅伝とは旧東海道を霊峰富士山に向かって若い衆が競い合って駆けつけるという、新年の奉納の神事という極めて日本的な行事なのだと思います。走る距離は全く違いますが、毎年関西地方でニュースになる西宮神社の福男選びと似ていますよね。

また、箱根駅伝の中継では事ある毎に歴史や各校の伝統などのエピソードが挿入されていきますが、箱根駅伝そのものが伝統と格式を持ったイベントを超えた神事であるという事を日本テレビが総力を上げて全国ネットで放映している訳です。

そして、5区の山登り区間のエキスパートにつけられるのは山の神という称号です。この名称は箱根駅伝という神事において神様の加護があるくらいの信じがたい力を発揮しているということの現れなのだと思います。

そうでないと、大会としては関東の大学しか出れない地方大会が日本全国でここまで盛り上がるとは到底思えません。

また、最近の青山学院はとても強いですが、ミッション系の上智大学立教大学明治学院大学関東学院大学箱根駅伝に参加していないか、あまり熱心ではなく、逆に東洋大学駒澤大学国士舘大学國學院大學などが熱心なのはこういう所に遠因があるかもしれません。

ですので男女平等のこのご時世、例えば10区間を男女5名づつにすればいいのではないかと思いますし、女性で箱根駅伝を走りたい人もいるのではないかと思ったりするのですが、そういう議論はあまり聞いたことがありません。大相撲も同じだと思いますが神事に関することに対して、日本人はかなり保守的である気がします。

それというのは繰り返しになりますが、箱根駅伝が江戸の旅を忠実に再現し、霊峰富士への若い衆の参拝という神事として定着しきっているからだと思います。

日本人は無宗教と言う人もいますが、一神教のようなわかりやすさがないだけで、神道的な感覚は多くの日本人がまだ持っているのではないかと思います。

圧倒的な成果を上げる人は元々フィジカルが強いという身も蓋もない件

弊社の役員を見ていて共通しているなと思うのは、肌艶がよくて実年齢より若く見えるという所です。特にゴルフが趣味の役員などは誇張でもなんでもなく黒光りしています。

また、エピソードもなかなかの感じで、例えばある役員は深夜便で海外出張から帰ってきて、家でシャワーだけ浴びてすぐまた次の出張先に向かったり(家に居たくない説あり)、他の役員は奥様に先立たれ、再婚した女性との間に60歳を過ぎてから子供をもうけたりとやたらパワフルな人が多いんです。

また、本を読んでいても、例えば佐藤優氏とか、神の手を持つと言われている脳外科医の福島孝徳先生とか、かなりのショートスリーパーのようです。

最近だと魔法使いの落合陽一さんとか、SHOWROOMの前田裕二さんとか、この人たち一体いつ寝てるんだよというくらいTwitterの更新が多いし、寝てないというTweetも多いですが、彼らも元々肉体的にも相当優秀なものをそもそも持っていると思わざるを得ません。

要するに彼らは生まれ持ってフィジカル的にエリートな訳です。我々一般人が寝てしまっているときに本を一冊読み切ったり、もうひと仕事するだけの肉体的なアドバンテージを持っているのは間違いないと思います。そういう人が圧倒的な努力をする訳で、我々はそもそも勝ち目がないのはあたり前です。

彼らの本を読んで試そうと思って駄目なのは、オリンピック選手がトレーニング方法の本を出したとして、それを読んでも我々がオリンピック選手になれる訳がないのと同じ理屈だと思います。

ただ、スポーツじゃなくて仕事だと能力的にそもそも勝ち目がないとかっていうのは、そうじゃない気がしますし、そうあってほしくはないと僕も思うわけですが、何かを成し遂げる人は圧倒的な体力と頭脳、また狂気とも言える信念を持って行動しているからありえない成果を出している訳であって、そんな人がたくさん居すぎてもそれはそれで困るわけですから、凡人は凡人であることを自覚した上で少ないリソースを戦略的に配分して行動するほうが逆に彼らに少しでも近付ける方法なのかなと思っています。残酷な話ではありますが。