Search Console

ホワイト企業のブラック職場より

メーカーの人事部門で人材育成関係の仕事をしてます。仕事がら組織とか戦略とかの本の書評が多めです

PDCAのAがようやく分かった件

社会人にとって「PDCAをまわす」というのは正面から否定できないというか、当たり前すぎる前提みたいなところがあります。穿ったいい方をすると、ビジネス教の聖典みたいなものかもしれません。

でもこのPDCAですが、よく考えるとわからなくなるんですよね。以下はWikipediaからのコピーなんですが、PDCAの説明は以下の通りです。

Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)の 4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する。

Planはもちろん分かります、計画はとても大事です。Doも分かります。計画を立てても実行しないと意味がありません。Checkもいいですよね、実行した内容の確認は必要です。

この後が問題です。Actionって辞書的には行動ですよね。PDCAをネットをざっとしらべる限り、Aは改善って訳語が当てられてるんですよね。改善ってImprovementじゃないですか。素直に考えるとPDCIサイクルであってもいいと思うんです。

さらに不可解なのはActionとPlanの関係です。Actionが百歩譲って改善だとして、改善の為の計画は必要ですから、PDCサイクルで十分な気がするんですよね。Aがなくても成り立つと思うんです。

そうは言っても「モンマルトルの丘」とかも、モンってフランス語で山(マウンテン)って意味ですから、てことは「マルトルの山の丘」とか言ってることになって意味わからんけど、まあそういうもんだみたいな事で納得される方もいるかもしれませんが、僕はそこで諦めたくはありません。

さてではこのPDCAは一体誰が言い出したかと言うと、どうもデミング博士と縁が深いようなのですが、日科技連の幹部が言い出したとか、出所が実は定かではないようで何やらミステリアスです。

ですが、デミング博士がPDCAに近い所にいるという事は、第二次世界大戦後にマッカーサーが日本を占領するために連れてきた品質管理の専門家達にヒントがあるはずです。

品質管理のデミング博士は大変有名ですが、同じ時期にTWI(Training Within Industry)という手法の職能訓練の専門家も日本に来ていました。

このTWIという手法ですが、第二次世界大戦中に米国で開発されたもので、戦時需要の中で造船所で軍艦とかを作る工員を募集して、急速に1人前にしなければならないという切迫した理由から産み出されたものです。いくつかのメソッドから成り立っているのですが、その中でJI(Job Instruction)と呼ばれるものがあります。

ちょっと長いですが以下が教え方の四段階のプロセスです。


第一段階 習う準備をさせる

・気楽にさせる
・何の作業をやるかを話す
・その作業について何を知っているかを確かめる
・作業を覚えさせたい気持ちにさせる
・正しい位置につかせる


第二段階 作業を説明する

・主なステップを一つずつ言って聞かせ、やって見せ、かいて見せる
・もう一度やりながら、急所を強調する
・はっきり、ぬかりなく、根気よく
・しかし一度に覚えられる能力以上に強いない


第三段階 やらせてみる

・やらせてみて、間違いを直す
・もう一度やらせながら、一つずつ主なステップを言わせる
・もう一度やらせながら、一つ一つ急所を言わせる
・よくわかったかたしかめる
・相手が分かったと自分が分かるまで繰り返す


第四段階 教えたあとを見る

・仕事につかせる
・わからぬ時に聞く人を決めておく
・たびたび調べる
・質問するようにしむける
・だんだん指導を減らしてゆく

相手が覚えなかったのは、自分が教えなかったのだ


という内容です。なんだか日本人にフィットしそうな内容ですが、個人主義の国だと思っていた米国が生み出したと思うとやや驚きです。

戦争は発明の父と言いますが、この手法が産み出された当時はナチス・ドイツがフランスを占領し、大戦が避けられない時代だった訳で、今とは比べ物にならないくらい切迫した状況だったのだと思います。

そして前述の通りに日本にTWIが輸入され、人材育成のメソッドとして一般企業にも急速に広まる訳です。

さて、PDCAの話でした。上の四段階を教える側の視点でアルファベットで表すとどうなるでしょうか?

第一段階は習う準備をさせる、Planです。第二段階は指導者側としてはやってみせるわけですからDoです。第三段階は、相手にやらせてみるわけですからCheckです。第四段階は教えたあとをみる各種の行動ですからActionです。これが当初のPDCAだったのではないでしょうか。

僕はこの説はかなり信憑性が高いのではないかと思っています。PDCAとは、仕事の教え方のプロセスをアルファベットにしたものが、いつの間にか仕事の取り組み方そのものにスライドしてしまったのではないかと思うのです。

そして、高度成長期に入り、そこそこの品質のものが作れれば売れるような時代が到来し、TWIが徐々に実施されなくなっていったのではないかと思います。

なぜならTWIは工場の生産現場のような、反復作業で技能向上するような内容には向いていますが、再現性があまりないホワイトカラーや営業の仕事にはあまり馴染みません。そして人材育成は長期的には会社の盛衰を決めますが短期的には影響は少なく、TWIも内容的には基本的というか地味に感じてしまうところもあります。(トヨタは上記の教え方の4段階をポケットカードにして今でも実施しているようなのですが、トヨタの凄さはまた別の機会に記事を書きたいと思います)

そんな中でPDCAだけはその語呂の良さから生き延びたのではないかと予想しています。そしてActionが行動ではよくわからなくなり、苦肉の策で改善ということばを当てたのではないでしょうか。

僕が引っかかっていたActionは人材育成における最終工程だったのかと思うとPDCAの奥深さが少し分かったような気もします。


あとこのエントリーを書くために参考にした本です。それぞれ大変面白いので書評も書いてみたいと思っています。


改善が生きる、明るく楽しい職場を築く TWI実践ワークブック

改善が生きる、明るく楽しい職場を築く TWI実践ワークブック

トヨタ経営大全1人材開発 上

トヨタ経営大全1人材開発 上

トヨタ経営大全1人材開発 下

トヨタ経営大全1人材開発 下