経営と執行の一層の分離を
さぷさんです。あるメディアに投書してみたのですが、見事に採用されなかったようなので、自分のブログにアップします。けっこう頑張って書いたんですけど(笑)
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ソニーが執行役員制度を1997年に導入し、またたく間に日本企業の間に広がってから20年以上が経過した。
制度の導入当初は経営と執行の分離を目的としていたはずだが、実際はどうだろう。大手企業のコーポレートガバナンスの体制図を見ていると社長が経営の監督と執行の両方を兼ねている会社が殆どのように見受けられる。
コーポレートガバナンスを高めるために社外取締役を設置する会社も増えてきたが、肝心の会社社長が経営と執行の両方のトップを兼ねている状態では、緊張感を持ち会社経営に専念できていると言えるのだろうか。
また、最近の新型コロナウイルス感染症などの困難が発生した場合は会社トップから「全社一丸になって難局を乗り切ろう」というようなメッセージが発せられ、社員もそれが当然のように聞いている。
「全社一丸」という言葉は日本人にとって心情的にすんなり受け入れられやすい言葉ではあるが、裏を返すと組織の各人の役割が曖昧であり、経営者を筆頭に社員全員がとにかくみんなで頑張ろうという事になってしまってはいないだろうか。これでは会社にプロフェッショナルが育たなくても当たり前であると言える。
折しも経団連会長の中西宏明氏やトヨタの豊田章男社長が日本型雇用を見直し、ジョブ型雇用を検討すべきとの踏み込んだ発言をした事は記憶に新しい。
この一連の発言はAIやビッグデータ解析などの高度プロフェッショナル人材を念頭に置いた発言だと思われるが、ジョブ型雇用を本気で推進するのであれば、経営者が監督と執行の両方を兼務し続けて、前者に専念しないのであれば説得力があるとは言い難い。
ただ、人数は多くはないがサントリー社長の新浪剛史氏や原田泳幸氏といったプロ経営者もいる。会社のトップ自らが緊張感を持って会社経営にあたり、年1回の株主総会で信任の可否を問うという姿勢が本来のあるべき姿のように思われる。また、行き過ぎた監督にならないよう、社外取締役の役割もさらに重要となる。
秋山真之は日本海海戦で「皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ」と訓示を出した。かたやネルソン提督はトラファルガー海戦で「英国は各員がその義務を尽くすことを期待する」と信号旗を出したと伝えられている。今、経営者はネルソン提督に学ぶべきではないだろうか。