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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

ジョブ型雇用が広がると企業内労働組合と衝突する

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最近はかなりジョブ型雇用について議論が深まりつつあるような気がします。

特にIT関連企業の危機感は強く、ソニーNEC、NTTdataなどはAI人材の確保の為に高い報酬を取り入れる会社も出始めています。今は新型コロナウイルスでそれどころではない状況ですが、企業の収益確保がより厳しくなっていく中、ジョブ型雇用の流れはより加速するかもしれません。

ただ、上記のような大企業のジョブ型雇用であまり語られていないのは、基本的に高額報酬と引き換えに1年契約などの契約社員であるという事です。

高度なAI人材は引く手あまたなので、ひとつの会社でステップアップすると、だいたい現場を離れてマネジメント業務につくことを求められる訳ですが、3度の飯よりコードを書いている方が好きという人材はマネジメント業務はやりたくない訳であってWin-Winの関係であると言えます。

そしてこのジョブ型雇用がどこまで広がりを持つかというのが注目される所ではありますが、それほどは一気は広がるものでもないのではないかとも思います。

例えばメーカーの職種を研究開発、生産、営業、間接部門と分けたとして、職種としての強みをそれ自体で活かせるのはITエンジニア、研究開発の特定分野での第一人者、トップ営業、凄腕の生産技術者、法務、経理、人事のエキスパートなどなのではないかと思います。

このような人材はどの会社に行ってもある程度すぐにパフォーマンスを発揮できるかもしれません。

ただ、厄介なのは基本的に日本の会社はまだまだ就社のイメージが強く、職種における実力とは別にその会社の中での立場の強さがより求められると言えます。

具体的には、社内でどれだけ人脈を有しているかという事になるのですが、大企業だと元々生産技術として入社したのに、生産管理に異動し、その後に調達、経営層になる為に海外現地法人マーケティングのトップとか、普通にありえます。(エリートコースの極端な例ではありますが)

多くの日本企業は職種のエキスパートにはなり得ず、会社のエキスパートになっていくという仕組みが出来上がっている訳です。

そういう事なので最近はあまり言われなくなって来たように思いますが、「昨日誰と誰は飲みに言ったらしい」と言う噂が高速で社内を駆け巡ったりする訳です。

さて、ここからがようやく本題なのですが、ジョブ型雇用と「企業別労働組合」の相性についてです。

日本企業の三種の神器は「終身雇用」「年功序列」「企業別労働組合」と言われてきました。

「終身雇用」と「年功序列」はかなり叩かれているイメージですが、「企業別労働組合」にはまだそれ程スポットが当たっていないように思います。

組合の組織率は年々下がっていますが、大企業ではまだまだ健在です。そして、基本的には労使協調路線が多いと認識しています。企業が倒産してしまったら自分達も職にあぶれる訳で、弊社でも口の悪い社員は組合の事を「第二人事部」などと言ってたりしています。

ですので、大企業の労働組合というのは、職種に関係なく、労働者側として会社に対峙しているという立場になる訳です。

しかし、冷静に考えますとメーカーで生産現場でネジを締めている人と、弁護士の資格を持つ法務職とでは利害はあまり一致しない中で、組合側も会社への提案は総花的に成らざるを得ない事になります。

本来であれば、現場の社員は現場環境の改善と雇用の継続が大きな目標になると思いますし、エリート法務職は大きな案件がクローズした時の長期休暇の取得や研修の充実を求めているかもしれません。会社一丸というスローガンの中でなんとなくやってきていますが、そもそも置かれている状況はかなり異なるのです。

よって、ジョブ型雇用が企業内で広がるようになってきて、基本的に単年度の契約社員だとすると、組合に入る動機は低くなっていきます。組合費も決して安くはないわけですし。

ですので、ジョブ型雇用を推し進める場合、どこかで「企業別労働組合」と向き合わざるを得ない日が訪れると思います。

「企業内職種別組合」が形成されるのか、欧米のように「職種別組合」が形成されるのか、組合の組織率が下がっていくのか、動向には注視して行きたいと思います。