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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

あえてジョブ型雇用のあら探しをしてみる

さぷさんです。2回転職しています。愛社精神は1社目に置いてきました。

さて、最近の日経新聞はジョブ型雇用のキャンペーン中ではないかというくらいジョブ型雇用押しの記事が多いのですが、ここはあえてジョブ型のマイナス点をあげてみたいと思います。

新聞記事などを読んでいてなんとなく分かってきたのは、ジョブ型雇用は文字通り仕事に人を当てはめるやり方ですから、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に切り替える会社はまず職務記述書を書かせて、その仕事の内容を明確にする事から始まるようです。

そして、おそらくここは相当に難儀でしょうが、その職務の適正給与水準を決定するプロセスが必要です。ただ、収入が増えればいいですが、減るケースも相当に増える中で激変緩和措置とかで、3年かけて適正水準にしていくという工夫が求められます。

また、基本的に特定の職種に従事し続けると言うことですから、人事部を例にすると労務管理、給与や社会保険、教育はそれぞれ専門性がありますから、それぞれでキャリアを極めることになります。

これにプラスして、人員の募集は社内公募が大々的に行われる事になり、社内公募に応募する事でキャリアチェンジする道は開けます。その上で社内公募で人が集まらなかった場合は社外公募というプロセスになるのではないかと思います。

以上がジョブ型雇用のとてもざっくりした説明になるとして、以下のような課題があるのではないかと思います。

《そのうち生え抜き経営者がいなくなる》
これは中長期的な課題として発生してくると思われるのですが、今は過渡期の入口なので、メンバーシップ型雇用の人材をジョブ型に切り替えるという点で、よく言えばハイブリッド型の人材が育成出来るメリットがあります。

つまり、メンバーシップ型雇用によって、異動を繰り返して会社全般について広く浅く知っている社員がジョブ型雇用によって専門性を身につける事が出来るという事です。

ただ、ハイブリッド型人材の育成のボーナス期は10年もすれば当初の効果がかなり薄れ、ジョブ型で育った期間が長い社員の比率が高まりますから、従来型の社内人材の長期選抜による社長の創出はおそらく終焉します。(社内公募を上手く使ってキャリアチェンジを繰り返して同様の効果を出すことがもしかしたら出来るかもしれませんが、出世を狙ったジョブホッパーは経験上だいたいろくな人材がいません)

ですので、オーナー型企業は別ですが、多くの企業ではプロ経営者を招かないと社長が務まる人材が社内にはいないという状況が発生する事が予想されます。


《会社とのドライな雇用関係の負の側面》
メンバーシップ型雇用の会社の社員は、モチベーションが高いか低いかは別にして、エンゲージメントといいますか、会社への忠誠心はかなり高い状態にはあります。

ですので基本的には労使強調ですし、割と性善説で会社の業務がまわります。

しかし、ジョブ型雇用を拡充する場合は、社員一人ひとりにプロ意識を高めてもらうと言うことです。プロ意識を高めるということは、自律した個人として会社と対等に向き合う事を求めていく中で、負の側面としては、会社を利用してやろうという社員が今よりも多く発生する可能性は高いと思います。

罰則規定の明確化や性悪説での制度運用を求められるかもしれません。


《不人気企業、不人気職場の発生》
メンバーシップ雇用の会社ですと、不人気な職場であっても異動の発令が出たら従わないといけないですし、異動したら意外に面白さを見出す事も出来たりするものです。

しかし、ジョブ型雇用によってジョブローテーションがなくなった場合、基本的に社内公募か社外からの採用になりますから、自らの職場の仕事が魅力的であって、働きやすい職場である事をマネージャーがアピールしないと人が来てくれないという事態が発生しかねないと言う事です。

つまり、その部門の仕事そのものの価値(給与水準、成長感、働きやすさ等)が採用希望者の数を左右する中で、人気のある部門は優秀な人材を確保できて仕事の質が高まり、それによって更に希望者が増えます。

一方で不人気な職種やマネージャーがパワハラ気質などの部門は逆の現象が発生し、部門から人が抜けて、充当もままならないという状況が発生します。ここまでくるとマネージャーはクビか降格ですが、マネージャーの力量が明確に求められるというある意味まっとうな世界が出現します。

年功序列への批判はとても強いですが、年功序列をやめるということはこういう事になります。

それでもジョブ型雇用に梶を切りますか?You have the choice. という状況が今の日本に企業に突きつけられている課題ですね。