Search Console

さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

企業は階層別研修を止めるべき時期に直面している

さぷさんです。メンバーシップ型雇用の会社でひっそり働いています。

今回は階層別研修について書きたいと思っているのですが、高度成長期くらいまで創業した一定規模以上の会社には大体において階層別研修があります。

名称こそ違えど、新入社員研修、中堅社員研修、新任管理職研修などが節目ごとに開催され、だいたい社内講師と社外講師の比率が半々くらいで、2日〜3日くらいの集合研修という形態が一般的だと思います。

新型コロナウイルス感染症予防の観点から、ここ1年、弊社ではほぼ全ての集合研修はリモート研修になっていますが、メンバーシップ型雇用の会社における階層別研修の仕組みは強固です。

だいたいどの階層別研修においてもその階層に適したコミュケーション、リーダーシップなどの講義が行われます。

本題に入る前に少しだけ人事制度について触れておきますと、今日の日本企業の人事制度の仕組みが整ったのは第二次世界大戦以降のようです。

詳細は失念してしまったのですが、海軍の人事制度を流用したという記述を以前人事関連の本で読んだ記憶があります。

日本海軍で言いますと、二等水兵、一等水兵、上等水兵などの兵に始まり、下級士官、上級士官、対象などの将官といった官階が設置されいました。

また、医務官は軍医少尉という士官から階級が始まるものの、中将までにしかなれないという制度上の工夫もされており、弊社の医務職も似たような制度になっていますので、軍隊と企業の人事制度はかなりの共通点があると思っています。

そして、よーいドンでこの階級制度の上を目指して時間制限無しの一本勝負が繰り広げられてきたというのが昭和的な日本企業の典型的なパターンであります。

そして、階層別研修というのは、この階級的な仕組みをより強固にする手段ですから、今のジョブ型雇用活用の議論とは真逆の方向であると思っています。

一方で、ジョブ型雇用とはその名の通りジョブディスクリプションが必要で、職務名、所属部署、報告先上司、職務内容、職務に必要な知識・技術・学歴・資格、業務目標などが必要とされます。

また、アメリカにおける雇用には、いつ、いかなるときも、理由の有無にかかわらず雇用主も従業員も雇用を解消できるという「At-Will(任意の雇用)」の原則があります。

※上記内容はパソナさんのサイトを参照しました。
https://www.pasonagroup.co.jp/media/index114.html?itemid=2133&dispmid=796

ですのでジョブ型雇用を無理やり軍隊に当てはめると、傭兵という言い方が出来るかもしれません。

傭兵というと、お金で集められて前線に投入されるというイメージがある一方で、腕一つで戦場を渡っていけるイメージがあります。

あと、補足になりますが、米国駐在が長かった先輩に聞いたところ、アメリカでもメーカーなどは長期雇用の会社も多くて安定を重視している会社も多いようで、ジョブ型雇用礼賛の雑誌記事などは割り引いて読んだことがよいというアドバイスを貰ったこともあります。

さて、階層別研修に話は戻りますが、上に書いたとおり、研修で実施される講義は、コミュケーションやリーダーシップなどの主に社外講師による講義と人事制度やコンプライアンスなどの社内講師の講義を2〜3日のカリキュラムで行う研修が一般的だと思います。

そこで、研修カリキュラム以外で重視されるのが階層別研修で久しぶり出会う同期との情報交換です。夜の飲み会も含めて同期と仕事について語り合う事で、仕事を幅広く知ることが出来たり、同期の頑張りに触発されるという非公式の効果を階層別研修は担っています。(今は新型コロナウイルスの影響で出来なくなってしまっていますが)

このような階層別研修の仕組みですが、アメリカに追いつけ追い越せで、日本も人口が増え続けており、基本的には品質を高めた製品を作っていたらその端から売れたという時代における年功序列の仕組みの強化として機能してきました。(バブル崩壊後に企業研修はかなりなくなったようですが、生き残っている企業は研修を続けてきたのだと理解しています)

ちなみに階層別研修と対をなす研修として、職能教育というものがあります。例えば生産現場における溶接やNC旋盤の技術、経理部門における財務諸表の作成、開発部門におけるツールの使用方法など、職種において技能を高める教育や研修がこれらにあたります。OJTで行われる事も多い分野でもあります。

纏めますと、典型的な日本企業における教育とは、基本的にはOJTがベースであり、それを補う職能教育があり、節目ごとにセレモニーとしての階層別研修がある構造になっている訳です。

ここでまたアメリカを例に出したいのですが(上記の通りアメリカで一括にしてはいけませんが)彼の国は「だって面接で出来るって言ったでしょ?」と言う事で職務に関するOJTや研修はないようですから、これはそれで極端なような気もしています。

ただ、コミュケーションやリーダーシップについても座学で充分な内容はe−learningに置き換えていったほうがいいように思っています。

そうすると、同期が顔を合わせて話し合う機会がなくなる訳ですが、これは新卒一括採用がベースの話であり、基本的には今後通年採用の流れになっていくと思いますので、同期という意識はあまり必要ではなくなる方向だと考えています。

ですが、いきなり新卒一括採用がなくなる訳ではないので、しばらくは従来型の採用と中途による補充の併用の時期が続き、階層別研修もしばらくは続くのではないかと予想しています。

その一方で技能を強化する職能教育や幹部候補の選抜研修などはむしろ強化したほうがいいのではないかと思っています。

言葉のチョイスが適切であるか否かは別にして、これからは基本的に傭兵的な働き方が世の中のメインになるとすると、ビジネスパーソンの価値を自分で高めていく必要がある中で、新卒一括採用がベースとなっている総花的でセレモニー的な階層別研修はその役割を終えていくのではないかと考えています。