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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

思考訓練

「20xx年に流行したウイルスの致死率は1%、治療法は見つかっていない、ウイルス感染の為に行動制限をした場合、1ヶ月以内に事業運営資金に支障が出る企業は10%、生活に支障が出る世帯も10%、3ヶ月後はその倍、それ以降も同様のペースが見込まれる、メンタルヘルス罹患率は全体の10%、国や地方自治体の支援は期待出来ない、医療機関は逼迫、収束の見込みはない」

という仮の前提で思考訓練をしてみたいと思います。

今、私達が新型コロナウイルスの対策の為に自粛を受け入れているのは一律10万円支給であったり、事業継続の支援金が期待できているからです。

また、「命の価値は何よりも重い」という価値観が広く共有されているからです。

この前提のうち、仮に国や地方自治体の支援が全く行われないとした場合、一体中長期的にはどういう事が発生してしまうのでしょうか。(現実はありえない事ですが)

国や地方自治体の支援が受けられないと仮にした場合、経済活動はすぐに再開される事になると思います。自助するしかなくなるからです。

そして、人や組織によって、致死率1%をどのように見積るかで行動に変化が生じます。新型コロナウイルスでは軽率な行動が非難され、現在は概ね自粛という方向で一致していますが、そこの抑えが効かなくなるので、自粛派と行動派の対立が激化します。

支援を要求するデモ行進が毎日のように発生し、一部が暴徒化、治安も悪化します。国は国家権力を使用して暴徒を弾圧します。

東京や大阪などの都市の低所得が多い地区は徐々にスラム化し、富裕層はゲーテッドコミュニティを築いたり、治安が安全な地方へ移住、または海外移住します。

社会の階層化がより強固になり、分断が進むため、政党も少数政党が乱立し、国会運営が困難になります。

電気、ガス、水道の社会インフラの維持も追いつかなくなるため、インフラ維持されている地域とそうではない地域の差が生じます。

メンタルヘルス罹患者も増え、人々の不安が高まるので、新興宗教が勢いを増します。終末思想を説く過激なものから、相互互助による現世利益を追求するコミュニティ的な宗教まで幅広く宗教の信者が増えていきます。

医療については、所得により受けられる治療が異なり、科学的根拠のない民間療法が幅を利かすようになってくる可能性があります。

アキラみたいな世界ですね。

死生観の変化は生じるのでしょうか。致死率1%で治療法がないという前提に経つと、どうしても感染症のリスクを受け入れたまま活動していかなればならないと言う事です。

「自分の命を諦めないが、勝つことも出来ない」というのはウイルスの流行があってもなくても最終的には人が受け入れなければならない運命ではあります。

今の死亡率のトップはガンですが、それがウイルスに置き換わるだけで、死生観には大きな変化は生じないかもしれません。

ただ、自分の不適切な行動が他人の寿命を縮めてしまうから協力しようという倫理観を持てない人の比率は高まる可能性は高いと思います。

自分の命を守ることに精一杯である場合、他者を思いやる想像力が欠如する事は仕方のない事です。

このように見ていくと、やはり一番の問題は社会の分断による人々の対立の激化であると思います。

不満を政府にぶつけるくらいなのはまだ健全だと思いますが、他に特定の集団を悪者に仕立て上げて攻撃するようになると、社会不安が一気に高まります。

危機的な状況に陥ると立場が弱い人から最初に追い詰められていきますから、社会的弱者の救済というのが社会の安定にとっては最も重要であると考えます。

強者は賢くて強かなので自助でなんとか出来る余地はあり、さらに弱者救済の責務もある訳です。

そして、政府や地方自治体が麻痺するとアキラの世界がやってきてしまうので、今は強い権限を持つ政府や地方自治体が望まれる時代となったかもしれません。

「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という格言は重要だと思います。

今読むべき本としては、生き方を見つめ直す本、ナチス・ドイツに関する本、関東大震災後の混乱に関する本、ペスト関連本あたりかなと思います。

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)

新装版 関東大震災 (文春文庫)

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  • 作者:吉村 昭
  • 発売日: 2004/08/03
  • メディア: 文庫

ペスト (新潮文庫)

ペスト (新潮文庫)

  • 作者:カミュ
  • 発売日: 1969/10/30
  • メディア: ペーパーバック