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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

三菱電機の品質問題における不正の構造

さぷさんです。メーカーの間接部門に勤務しております。

さて、メーカーと品質問題は切っても切り離せない生命線なのですが、三菱電機では長崎製作所の不正検査で社長が引責辞任となり、ISI9001の認証なども取消になったとの事です。

同社は同製作所などで製造した鉄道車両向けの空調装置や空気圧縮機の品質検査において、30年以上にわたり不正行為を行っていたとの事で、国内シェア65%を占める中で業績への影響は精査中とされていますが、9月に公表されるという調査結果が待たれます。

三菱電機、不正検査で長崎製作所の国際認証停止:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC293010Z20C21A7000000/

三菱電機のホームページにある労働慣行を見てみましたが、パワハラ問題の対策が(いろいろ問題を起こしてますので)目を引くものの、メーカーとしては比較的オーソドックスな内容に見受けられます。

ただ、気になるのが、働きがいのある職場づくりにある以下の記述です。

『「成果」=「能力×やる気」であり、従業員のやる気の向上のためは、従業員エンゲージメントの向上が必要です。エンゲージメントの向上は、従業員のモチベーションや生産性の向上による従業員・組織の成果の向上、更に顧客満足(CS:Customer Satisfaction)・競争力の向上、業績向上につながっていくと考えます。』

最近の人事のトレンドは従業員の安心と安全を確保して、従業員ひとりひとりの適正に応じた仕事を割り振り、自主性を尊重することで成果を引き出すという流れがあります。

グーグルが2016年にプロジェクトアリストテレスの結果レポートを公表して心理的安全性が注目されてからの流れがある中で、そりゃグーグルみたいに基本的に優秀な人材しかいない中では、心理的安全性を確保しただけで生産性が上がりますよねと愚痴のひとつも言いたくなってしまう気もしないでもないですが、社員の幸福を真剣に考える企業が日本でも少しづつ出てきているのは個人的には良いことだと思っています。

その点で三菱電機は一昔前の成果主義を土台にしており、ホームページでも目立つ形で掲載されているのが気になるといえば気になります。

また、従業員エンゲージメントと言えばなんとなく聞こえはいいですが、要するに会社への忠誠心ですし、あと、企業がモチベーションについて言及するときの本音を誤解を恐れずに言うと、「賃金アップでは報えないけどやる気は出せ」ですから、この文章を読んだだけでも従業員は会社に尽くすべきという風土が滲み出ている気がします。

あとこれは又聞きですので真偽の程場は不明なのですが、三菱電機の人事制度は現場部門と間接部門で完全に分かれており、現場をリスペクトするような制度にはなっていないということを聞いたことがあります。

上記ホームページを見たところ、現場部門の人事施策としては技能競技大会があるようですが、現場部門は声を上げにくい部分があるため、組合の働きがとても重要である中で、三菱電機労連が現場部門の意見集約と地位向上、会社への申し入れをどれくらい行っているのか(または行っていないのか)興味があります。

誰も好きこのんで不正をする訳ではないと思いますので、おそらく、構造としては限られたヒト・モノ・カネの中で製品をラインアウトさせるためのある意味合理的な行動が検査の不正だったのではないかと思っています。

ただ、この論理は極めて内向きであり、リソースが制限された中での最終手段だったと想像する訳ですが、資源が投入されずに結果を求めるとどういうことになってしまうかという極めて(悪い)典型的な例だと思います。

逆に倫理通報ホットラインも設置されている中でよく30年も不正が発覚していなかったなと驚く訳ですが、9月に出るとされている報告書がどこまで具体的に事実に迫ることが出来ているのか注目したいと思います。