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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

ファミマの無人店1000店は生産性向上なのか?(2021/9/11日経新聞朝刊)

さぷさんです。ファミチキ大好きです。

さて、本日の日経新聞の一面は以下の記事でした。

ファミマ、無人店1000店 通常の品数維持 : 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO75676840R10C21A9MM8000/

ファミリーマート無人コンビニエンスストア店舗を2024年度末までに約1000店出す。通常店舗と同様に約3000品目の扱いが可能だ。本格的な無人店の大規模展開は日本で初めて。これまでは店舗に人の常駐を求める規制が足かせになっていたが20年にルールが緩和された。人口減少で日本の人手不足は今後深刻さを増す。デジタル技術で事業運営を効率化する動きが広がる。」

という記事でして、記事の中には生産性向上という文字は見当たらないのですが、見出しのリード文に「小売の生産性向上」とありまして、本当に生産性向上なのだろうかと思いましたのでその事について書いてみます。

ファミリーマートの日販は平均49.3万円だそうです。ちなみにセブンイレブンは日販65.6万円でぶっちぎりの一位です。

売上におけるコスト構成は分からないのですが、飲食業ですと人件費、家賃、仕入れがそれぞれ3割づつというのが理想と言うことを聞いたことがありますので、それを流用させて頂くとするとファミマの人件費はざっくり1日15万円くらいになります。(人件費は地域とか業界平均で決まってきますので、あくまで簡単な推計です)

基本的にコンビニは飽和しており、日販は平均額に留まるとすると約50万円ですが、無人店舗にすると採算が取れなかった地域への出店が可能になるという事なので、そのような地域は日販が3割程度低いとすると35万円になります。

人件費については、完全に無人店舗だとすると先程試算した15万円が不採算地域の日販の金額を埋めますので、計算上は新規出店が可能ということになるのかなと思います。

これから2年半くらいかけて1000店舗出店する計画のようですから、35万円×365日×1000店で1300億円の売上増加が見込めます。

ただ、出店コストは約2割高く、新たな管理コストも発生しますのでどれだけ優良な商圏を持つ従来の不採算地域を確保出来るかにかかっていると思います。

また、首都圏でしたら家賃は高額になりがちですし、地方ですと50m先のコンビニにも車で行くような車社会ですから、地方の不採算地域にファミマが出来たとして、そこのファミマに行くようになると、従来足を伸ばしていたコンビニに行かなくなるだけですので、消耗戦は続くのではないかと思います。

生産性は様々な指標がありますが、一番シンプルなのは投資のインプットに対する売上のアウトプットです。

ファミマの無人店舗の取組はこのインプットのうちの人件費を減らせるという所がポイントで、日本人がコンビニで使う金額の上限が増える訳ではありませんから、他社コンビニからお客さんを奪うということは出来るかもしれませんが、日本の消費自体が縮小している中ではコンビニ業界の争いがさらに苛烈になると言うことになると思います。

繰り返しになりますが、今回のファミリーマートの取組はインプットの分母を減らして今まで出店してこなかった地域への出店を可能にするものの、業界自体は伸びていないので消費者の財布の中身の奪い合いが激化するという構図だと思います。

ですので、上で1300億円ほどの売上増加と書きましたが、それは既存のファミリーマートを含んだコンビニやスーパーからのスイッチになりますから、win-winではなく、ゼロサムゲームになると思います。

話は全然違いますが、シン・エヴァンゲリオンは前作から9年かかってようやく公開されましたが、興行収入は102億円なので、インプットに対するアウトプットという意味では生産性が高いと思います。

全体のパイが増えない中でのインプットを減らすことによる生産性向上と、成長市場を作り出すという意味の生産性向上は全く違うと思うのですが、日経新聞は何かと生産性向上と言いたがるのでちょっとなあと思いました。

そういう意味でここからは蛇足ですが、今回の記事本文では生産性向上という言葉は使われておらず、厚生労働省規制緩和無人店舗に関する技術、出店戦略などについて書かれているのですが、担当記者の思いとデスクの意向が微妙に異なっていたのかもしれず、そういう事を考えて読むのも楽しいですね。