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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」に行ってきた感想

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さぷさんです。都市論やサブカル好きなので国立新美術館で開催中の「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」に行ってきました。

2018年にパリで「MANGA⇔TOKYO」展を開催し、3万人が来場した展覧会の凱旋展覧だそうです。おそらく当初は2020年の東京オリンピックの時期と重ねて、インバウンドの観光客も見込んでいたと思います。

しかし、新型コロナウイルスの影響によって会場の入場は時間帯毎に制限され、外国籍の人は見当たりませんでした。私たちは可能性が低かった方の世界線を生きています。ある意味現実が漫画を超えてしまった事をあらためて認識しました。

東京という都市はロラン・バルトが喝破したように中央に皇居があり、中心に意味を持たせず、いくつかのターミナル駅、幹線道路、高速道路が円環状に皇居を囲むという中空構造になっています。

また、東京は歩いているとアップダウンが思いのほか多く、複雑に入り組んだ尾根筋と谷筋によって街に自然の境界線が引かれていたりします。

一方で、大阪は南北を筋、東西を通といい、御堂筋や堺筋などの南北のメインストリートと本町通りや長堀通りなどの通りによるグリッド構造で、キタとミナミの2大商業地に代表される比較的理解しやすい都市です。

東京は後ほど説明する一点を除いて特定のイメージを拒否するといいますか、人によって想像するイメージが微妙に異なる面白い都市ということが言えるのではないかと思います。

さて、前置きが長くなりました。この展覧会は写真を撮ってよい場所がいくつかありました。

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この展覧会のオリジナルキャラクターのヨリコさんだそうです。展覧会にオリジナルキャラを用意するというのはあまりないような気がするのですが、国立新美術館の本気度を感じてしまいました。


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おそらく今回の目玉の展示である「1/1000巨大東京都市模型」です。幅約 17 メートル、長さ約 22 メートルの巨大な東京の都市模型だそうで、東京を舞台とするマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品の映像が流れると、その場所にスポットライトが当たるという凝りようです。

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これは「残響のテロル」で都庁が爆破されるシーンですが、そのタイミングで都庁にスポットライトが当たるというものです。この写真だとスポットライトが目立つように見えるのですが、あまりよく見えなかったような気がするのでちょっともったいないなと思いました。


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初音ミクとコンビニのコラボです。町中を歩いているとよく見る光景なので、展示する必要があるのかなと思わなくもないですが、外国の方が多く訪れる事を想定していたのかもしれません。


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これは電車の中のラブライブ広告ジャックです。背景に東京ビッグサイトの画像が流れている凝りようです。ただ、この座席レイアウトはゆりかもめの車内ではないですから、現実的にはない光景なのかなと思います。


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ラブライブ等身大パネルもありましたよ。ファンの方は嬉しいでしょうね。


写真を撮っていいのはこれくらいで、後は撮影禁止でした。展示は「破壊と復興の反復」「東京の日常」「キャラクターvs都市」という3つのテーマで漫画やアニメ、ゲームが展示されていました。以下、順不同で気になった展示物について書いてみたいと思います。

がんばれゴエモン2》
がんばれゴエモン2 [3DSで遊べるファミリーコンピュータソフト][オンラインコード]
まさか小学校の頃に遊んでいたファミコンソフトと美術館で出会うとは思っていませんでした。しかしゲーム画面をよく見ると、ゴエモンのドット絵のシルエットは浮世絵の役者絵と酷似しています。背景や敵キャラ含めてファミコンの2D表現と浮世絵の平面的な絵の特徴は非常に相性がいいのだと感じました、

34歳無職さん》《ひとり暮らしのOLを書きました》
34歳無職さん 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
ひとり暮らしのOLを描きました 1巻 (ゼノンコミックス)
この2つは初めて知りましたが、東京で生きる若い女性の負の側面を書いた作品でした。根無し草的で匿名性の中で生きる苦しさを感じさせるものでした。都市の持つ宿痾ですが、貧困女子の存在等、社会課題と直結しているものです。


ゴジラシリーズ》
ゴジラ
東京が持つ唯一の統一イメージは、上記にもある通り破壊です。関東大震災東京大空襲で壊滅的な破壊を受けた記憶をゴジラシリーズは引き継いでいます。ただ、初代ゴジラが一番本能に訴えかけるような恐ろしさがあって、それが徐々に薄れていってしまったようなイメージがありました。


シンゴジラ
シン・ゴジラ
他の作品は東京の中でも一部の出来事にスポットライトを当てたものが多い中で、シンゴジラは東京の多くの地域が映画の舞台になっているスケール感があります。庵野秀明監督は、宮崎駿などの戦争世代の体験を自分ができなかった事に強烈なトラウマを持っていると思うのですが、自ら作品の中で戦争を引き起こすしかなかった庵野監督の作家としての特徴が作品によく反映されるのだと思いました。エヴァンゲリオンも展示されてますから、庵野監督はこの展示会でかなり目立っていると思います。


東京ゴッドファーザーズ
東京ゴッドファーザーズ
今敏監督の名作を見た事を忘れてしまっていました。クリスマス前に見なければいけません。


《寺島町奇譚》
寺島町奇譚(全)
1968年の作品で、戦後すぐの情景が書かれているのですが、デフォルメされているのに本当に体験したり見たりしていないと書けないようなリアリティを感じました。頭に残りますね。


東京という都市は最初にも書いたとおり、特定のイメージは付与されていない中で、作家の個性が如実に現れるよく言えば変幻自在、悪く言えばヌエ的な特質を持った街なのだと思います。

あとこれは完全に蛇足ですが、基本的に東京23区に作品が集中している中で「平成狸合戦ぽんぽこ」「耳をすませば」など、三鷹に本拠地があるからと言ったらそれまでかもしれませんが、東京西部の作品が多いスタジオジブリはかなり異色なのかなと思いました。(尚、この展示会にジブリ作品はありません)

アニメや漫画、サブカル好きならおすすめの展覧会だと思います。