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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

自分が「働かないおじさん」になるとは思わなかった

僕は以前全従業員の中でもトップクラスを争う残業時間を誇る昭和型のダメ社員でして、人事部や組合からかなり目をつけられていました。

しかし、最近異動になりまして、いわゆる本社のコストセンターの部門なんですが、正直かなり暇です。「今日あとまだ5時間もあるよ、どうしよう」と思ったのは新卒の時以来かもしれません。

ただ、前任者はかなり毎日残業していたみたいなのですが、この仕事量でなんでこれだけの残業が必要なんだろうとかなり疑問に感じつつ、そこは僕も波風を立てたくない典型的なジャパニーズトラディショナルサラリーマンですから特にそこは聞かずに淡々と引き継ぎを受けました。

そしてここからは実話ではなくて完全に作り話なのですが、例えば事業所に生えている草をひたすらむしる事を目的とした「草むしり推進本部」という本部があるとします。(こういう事を言うと本当に「草むしり推進本部」に僕が所属していると勘違いする人が稀にいるのですが、あくまで例え話です)

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だいたい組織ができる時はちゃんとした目的があって、その手段としての組織体制であるはずです。きっと草むしりをしなければならない差し迫った状況があったのだと思うのですが、設立の経緯はもう誰も知らなかったりします。

そんな中で、草むしりは多分最初は月1回くらいだったと思うのですが、そこは「草むしり推進本部」です。草をむしることが最大にして唯一のミッションです。

月1回では全然足りないと言う事で、二週間に1回になり、一週間に1回に頻度が上がっていきます。

また、夏場の草むしりでは脱水症状になるので水分補給のルールが出来、水分補給担当が設置されます。

そして、たまに葉っぱで手を切ったりする人が出てくるので、草むしりには救急箱の携帯が必要になり、救護担当も設置されます。

「草むしり推進本部」も日本企業の例に漏れず少子化高齢者の影響をもろに受けてますから、中腰による腰痛者がある時続出して、草むしり前のラジオ体操が義務付けられます。

そして、「草むしり推進本部」のメンバーの中で常に不満がくすぶっていたのが、田中さんのむしる草の量が少ないのではないかという事でした。

なので、ある時期から草むしりをした草は個人毎に計量される事になり、個人のむしった草の量が見える化されました。

ただここで新たな問題が生じました、草が狭い面積に大量に生えている方が仕事量が多いのか、広い面積に点在していて歩く距離の多い方が大変なのか、いわゆる「雑草抜くのと原っぱを歩く方、どっちが大変なのか問題」の勃発です。

暫定的な解決策として、各人に万歩計を渡して、歩いた歩数とむしった草の量の両方で評価する事になりました。

ただ、この評価を悪用し、まず草の密集地である程度草をむしってから、雑談をしながら散歩する社員がいるというタレコミがあったのです。

「草むしり推進本部」の改革室のメンバーは、ドローンによる監視も検討していますが、コストや有効度について、本部長の了承を得られる事が出来ていない状態のまま、有効な手が打てていません。

また、むしる草が少なくなって来たのとほぼ同じ時期に「コケはむしるべきなのか、草じゃないからむしるべきではないのか問題」が発生しました。

何回も打合せが行われましたが、結論としては「コケは地衣類であり植物学上の草ではないが、草と一緒にむしる事とする。但し、事業所内の日本庭園のコケは除く」という本部長方針が出されました。

また、他社事例の収集、年に一度の草むしり技能競技大会の実施、草むしり検定の制定、正しい草むしりのやり方の教育コンテンツの充実、年間MVP制度、草むしりへの取り組みの心得冊子の作成と配布、KPIによる管理など、「草むしり推進本部」は日々充実した草むしりを実行しています。

以上すべて僕の妄想による冗談ですが、何が言いたかったかというと、当初は何かしらの目的があって手段として設置した組織が、そのうち組織の存続が自己目的化して、様々な仕事を作り出すということになってしまってないでしょうかと言う事です。

もしかするとその本部や組織は会社での使命を終えていて解体すべきかもしれないのに、社長が肝入りで作った部門だからとか、祖業の部門だからとか、そういう理由で残ってしまっている組織はある程度規模の大きい会社にはあるのではないでしょうか。

そしてそこにいる社員も実は自分の仕事が会社の大勢に影響がないと言うことは分かっていますから、仕事に身が入らず、すぐタバコに行ったり、お昼の15分前から社内食堂メニューを吟味し、ベルがなったらすぐにダッシュしたり、こっそりネットサーフィンをしたり、それでいてなんか忙しいオーラを出して、大したことないのにちょっと厄介な案件だぞみたいな難しい顔をしつつ、誰にも気付かれずに絶妙なタイミングでこっそり帰宅する訳です。

僕もいままさにそのような部門に異動になった中で、そのうち感覚が麻痺するか、仕事がないというと自己否定につながるので何か意味のない仕事を作り出してしまうのか、「働かないおじさん」として、どう会社生活を送っていくのかの岐路に立っています。

あなたの会社にも「草むしり推進本部」はないでしょうか、そこの社員は短期的には仕事をしておらず腹立たしいと思いますが、崖っ淵の社員です。目をつぶって現状を見ないふりして逃げきる事も出来ない時代になってきたと思っています。自戒をこめて。

【追記】
この記事、女性の方の思わぬ共感が比較的多かったのですが、そうなんですよ、「草むしり推進本部」は、仕事の出来ない&やる気のないおじさん達の集まりなので、事務が出来る女性が1名ほど人身供養的に配置されがちなんですよね。

ほんとごめんなさい。この場を借りてお詫び申し上げます。