「面談のプログラムのなかで、唯一決まっているのが「あなたはハッピーですか?」という最初の質問でした」(本文から)
僕の嫁さんのママ友の一人の方で、ご主人の転勤で引っ越しをされた方がいるのですが、仮にAさんとします。
嫁さんとそのAさんはずっとLINEや電話を続けているみたいなのですが、ある日嫁さんが深刻そうな顔で「Aさんがご主人と別居になって、メンタルクリニックにも通ってるらしい。娘さんは実家に預けている」との事でした。
嫁さんの話では、Aさんはとても純粋な方で、ご主人一筋という事なのだそうです。
ママ友さんによると、ご主人の風俗通いがAさんにバレてしまい、今までの信頼関係が崩れてしまったという事でした。
ご主人がどういう思いで風俗通いしたのかは分かりませんが、決してハッピーとは言える状態ではないと思います。
Aさんのご主人は果たして仕事に身が入っているのでしょうか。
もし僕がご主人の上司や同僚だったとして、朝あいさつしても返事はなく、プライベートの事は一切触れないような状況であったらどうなってしまうのか。
冒頭の文に続けて岩田さんはこう言っています。
「不満を持っている相手は、不満がたまっていればたまっているほど、まずその不満をこちらが聞かないと、こちらの言うことは耳に入らないですよね」
相手がいったい何処に引っかかってしまっているのか、それが仕事なのか、プライベートなのか様々だと思いますが、その引っかかってしまった所が解消されなければその人は上手く前に進むことが出来ないのだと思います。
さらに岩田さんはこう続けています。
「言いたいことを言ったあとだったら、ある程度入るんですよ、人間って」
「相手がこころからそれをいいと思ってそれを言っているのか」
「私心というものを、どれだけちゃんとなくせるかが、マネジメントではすごく大事だ」
つまり、「あなたはハッピーですか?」というシンプルな質問は、ハッピーであればそれがよいし、もしそうでないとした、何処でその人がいま引っかかってしまっているのかを自問してもらうための質問なのだなと思います。
ただ、この質問は優しいようでいて、場合によっては心をえぐられるような質問ではないと思うんです。
例えば上で書いたAさんのご主人に対して発せられた問いであれば、とても厳しい内容であると言えるのではないかと思います。
岩田さんの本を読んでいて思うのは、自然体に思えるのに自他共厳しく律していたり、優しさの中に鋭さがあるような、そういう不思議な方だったのかなあという事です。
それでいて天才プログラマーであった訳で、そういう才能に惚れ込んで山内さんが社長を託したのかなと思います。
それまでの任天堂は同族経営だった訳ですから、山内さんもとんでもなくスケールの大きい方だったのだとあらためて思います。
さて、仮に僕に部下がいたとしたら、面談で「あなたはハッピーですか?」と聞けるのかどうかちょっと自信がありません。
「あなたはハッピーですか?」と聞いて、部下がそれなりに心を開いて答えてくれる前提として、毎日部下の顔色を見て、調子が悪そうだったら声がけをするような日頃の行動があってこそなのではないかと思います。マネージャーの自己満足の為の質問ではないですからね。
別な本で、「利他主義とは、積極的自己主義」であると書かれていました。
部下がハッピーな方が、職場や仕事にもいい影響を与えると思うのです。プライベートの事柄であっても、場合によっては話を聴く積極性が岩田さんにはあったのではないかと想像しています。
岩田さんは忙しい中でも面談を欠かさなかったそうで、1on1ミーティングが注目される遥か昔に実施されていたという事なのだと思います。
本書で僕はマネジメントの部分の印象が強かったですが、人によってはプログラマーとしての岩田さんに強く惹かれるかもしれませんし、ゲームづくりの理論的な所に惹かれる人がいるかもしれません。よい本というのはいろいろな見方が出来ます。手に取ってもらいたい本のひとつです。