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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

あなたの部下や同僚は「他者共感力」がないのではなく「他者と自己を同一視」しているかもしれないという話

この前、Think CIVILITY(シンク シビリティ) 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である という本を読みました。

例えば礼儀正しいひとりの人が100の利益を組織にもたらしても、無礼なひとりの人は300の害を与えるから、無礼な人を雇わないことが重要だというような事が書かれていたのですが、この本を読んだときに以前同じ職場で働いていたXさんの事を思い出さずにはいられませんでした。

Xさんは30代前半の男性社員なのですが、仕事にはプライドとこだわりを持って取り組んでいるようで、残業も多い社員でした。

仕事熱心な部分については否定は出来ないのですが、たまに話しかけているのに無視をしてきたり、そうかと思えばやたら馴れ馴れしく頼ってくる時もあって、僕の中で今までこういうタイプには接したことがなく、かなり違和感を感じた記憶があります。

このようなタイプの人は「こうあるべき」という自分なりの理想やこだわりがとても強くあって、「おれはこう思うんです」という主張が強い一方でメンタルが不安定なところがあり、当時かなり手を焼きました。

このような他者共感力がない社員はどう対応していいのか考え続けたところ、ついに最近ある事に気が付きました。

他者共感力のなさとは、他者に共感できないのでは無く、逆に自己と他者が異なるという事がまだ身についていないのではないか?という仮説です。

どういう事かと言いますと、赤ちゃんというのは自分と自分以外の世界が異なっているという事を認識出来ていません。

自分と世界は完全に一体化しており、不快であれば泣けば母親(または父親)がおむつを替えてくれたり、ミルクをくれたり、寝かしつけてくれたりしてくれる訳です。不快であれば泣けばいいのです。

また、小学校低学年くらいになってもまだ事実と願望の区別がつかなかったりします。

次男が小学校1年生くらいだった頃、休みの日の朝に次男が「遊園地に行きたい」と言ってきた時に「行けたらいいね」くらいの返事をしたのですが、午後になって「遊園地に行く約束したのにお父さんの嘘つき!」と泣きながら言われた事があります。

曖昧な返事をした僕も悪いのですが、おそらく次男の中で「遊園地に行きたい」→「行けるといいねとお父さんは言った」→「遊園地に行ける」みたいな考えになったのだと思います。

つまり、乳幼児の自分=世界という状況から、徐々に成長して世の中そんなに甘くはないぞというのを学んで大人になっていくという過程があると思うのです。

他者共感力が低い人は、他者に共感できないのでは無く、他者と自分がまだ上手く分離出来ていない人を指すのではないかと思うのです。

言い換えますと、自分が思っている事は他者もそう思っているはずという世界観で生きているということです。

おそらくは健全な形での母子分離に失敗し、ギャングエイジの時期にも友達との関係を上手く結べないまま大人になってしまったのではないかと想像します。

なので目の前にいる30代前半の同僚の男性社員は、生物としては30数年経過している訳ですが、メンタルモデル(の一部)が小1くらいに留まっているのではないかと考えを改めました。

そのように考えると、無視する一方馴れ馴れしいという行動が理解出来ます。小1くらいと同じな訳ですから。

しかも母子分離が上手くいっていない困った小1です。要するにXさんは母親に対する行動を会社でも繰り返していた訳です。

相手が母親に甘える小1のメンタリティを持った30代のおっさんだと言うことが分れば対策は立てられます。

まずは傾聴です、相手は小1ですから膝を折って目線を下げなければいけません。

話を聞いていったん認めた後「でも、○○君の立場になるとどうかなあ?」とお母さんが夕飯時に我が子を諭すように、話をする必要があります。

つまり、母親が出来なかった事をやり直すという育て直しが必要になってくる訳です。

かなり崩壊してきたとはいえ、まだ年功序列で終身雇用の会社ではこれをやるしかありません。

但し、相当の労力とコストです。本来両親が行うべきだった10年以上分のコストの引き受けな訳ですから。

ただ、多かれ少なかれこのような傾向を持った社員比率は高まっているような気もします。

Xさんとはしばらく会っていませんが、上には対策を書いたものの、コストの引受手にはなりたくないなというのが正直な感想ではあります。