さぷさんです。人事村の片隅で生きています。
さて、今回はあまり語られる事がなく、他部門からは「問い合わせしてもメールか電話だけでホスピタリティがゼロだな」と言われがちな人事部の社員の生態について語ってみたいと思います。
一口に人事部といっても様々な仕事があります。人事考課、就業管理、福利厚生、給与計算、組合対応、教育研修、ハラスメントのトラブル対応などなど多岐に渡ります。
また、人事部がその会社でどれだけ力を持っているかというと、その会社によってバラバラです。
弊社は事業部門の力が強くて人事部はそれに振り回されている感があるのですが、ある上場会社の人事部長の方にお会いする機会があった時に「問題がある社員はいるが、そういう時は本部長を呼んで囁くとまあすぐ(異動の)発令が出るからね」と仰っていて戦慄した記憶があります。
人事部は管理部門ですから、ビジネスの視点には欠ける中で、あまり力が強すぎるのはどうかなあと個人的には思います。
繰り返しになりますが、人事部の仕事は多岐にわたります。ジョブローテーションをしながらキャリアを積むわけですが、大きく分けて3パターンくらいの特徴に分かれるようになります。
1つ目、トラブルシューター
会社は日々何かしらの問題が起きています。最近はコンプライアンスやハラスメントについての知識と権利意識が高まっていますので、会社も窓口を設けている中で、主にトラブルシュートを得意とするタイプが人事村には生息しています。
コンプライアンスやハラスメントの問題は会社を大きく揺るがす問題に発展してしまうかもしれないため、ここにはエース級が配置されます。
ただ、ハラスメントやコンプライアンスも程度が重くなければ各職場のマネージャーで解決出来るわけで、人事部までやってくる事案は相当に拗れている案件になります。
セオリーとしては、関係者にヒアリングして、レポートを書き、然るべき処分をするような流れになる訳ですが、こういう厄介な案件をそつなく収束出来る社員が出世していきます。
また、トラブルシューターと言っても、日頃はルーチンワークを持っていて、事案発生時に登場するようなイメージとなります。
ですのでこのタイプは個別の事案には滅法強い一方で、企画なんかをしてもらうと結構出来ないケースがあって、元々のポテンシャルは高かった筈なのですが、育成って本当に重要だなと思います。
2つ目、制度屋
人事規則や就業管理の規則など、人事は制度の塊であると言えます。また、個人情報保護法や労働法など、法律の改正にも対応していく必要があります。
また、組合がある会社においては組合対応も重要になってきます。
ですので、人事村の住人の中でも理屈っぽい人間が制度屋としての頭角を表す事になります。
トラブルシュートも出来て制度設計も出来るハイブリッドなとても優秀な社員もごく一部ながら存在します。
制度屋は一目置かれるエリート社員であり、会社全体の人事制度を握ってる訳ですから、やや近づきにくさがあります。
3つ目、実務担当者
福利厚生や食堂運営、給与計算など、人事部は経理部と並んで事務処理の多い部門です。
その事務処理を担っているのが実務担当者になります。日々のオペレーションを担っている中で、正確さやミスの少なさが重要とされます。
また、実務担当者と制度屋は険悪になる事も少なくなく、組合との交渉で妥協して、制度的に複雑になってしまったものを実務担当がルーチンワークとしてこなしていくことになるのですが、実務担当者は「一言相談してくれてもいいのに」と言い、制度屋は「組合対応でそれどころではない」と言いがちです。
ただ、出来る制度屋は要所要所で実務担当者とも話をして、運用面からも制度検討をするように心掛けている人もいますが、本当に一部です。
また、実務の中でも特に給与計算は専門性が高く、1年を通して毎月の給与計算と年2回の賞与計算に加えて、地方税の洗い替え、社会保険の算定と月変、年末調整などがありますから、弊社では一旦給与に行ったらなかなか出られないというのが定説です。
そして、実務担当者として長年会社におり、社長を未だに「〇〇君」と呼ぶお局様が実は最強という説もあります。
以上、大まかに分けて3種類くらいのタイプの社員がいるという事をご理解頂けたでしょうか。
上記の3タイプに共通して言えることは、社員の個人情報を扱っているので口が堅い必要があるという事ですね。
最近はHRテックなども注目されてきていますが、人事系の人材から適任を探すのはなかなか難儀だと思います。制度屋が一番近い所にいる気もしますが、データを取り扱う事に慣れている訳ではないので、難しいような気がします。外部の会社の知見も活かしつつ、素養のある社員を地道に育成していくのがオーソドックスで実は一番の近道かもしれません。