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さぷログ

メーカーの人事部門で働いています。

「なんかよく分からないけどスゴい」ってなりがちなAIはバブル

さぷさんです。人は情熱を失ったときに青年期が終わるのだと思いますが、最近自分が壮年期に入って来たなと思ってます。

さて、AlphaGoがプロ棋士を破ってからくらいだと思いますが、ディープラーニング型のAIのブームがまだ続いている中で、「なんかよく分からないけどすごい」となりがちなAIについて書いてみます。

新聞とか雑誌とかWebの記事などを見ていても、AIに仕事を奪われるとか、少子高齢化の切り札はAIだみたいな書かれ方をしています。

前者は「よくわからんけど怖い」みたいなラッダイト運動の現代版のようであり、後者については確かに一部で業務の肩代わりは出来るかもしれませんが、RPAとごっちゃに考えていそうですし、そもそもAIは消費者になってくれませんから、少子高齢化による日本の衰退をAIが解決出来るものではないと思います。

山本七平は著書の中で、日本は物に神が宿る「物神」になってしまうと喝破しましたが、神風、戦艦大和、最近だとPCR検査があればなんとかなるみたいな思考で、何か象徴的な物を神と崇めるという事を令和の時代でもやってしまうのが我々ジャパニーズの宿痾です。

未だに古典的アニミズムから脱却していないという点で絶望を感じざるを得ず、ジャパニーズは全くもってロジカルではありません。

さて、話が脱線しましたが、AIの話でした。AIもご多分にもれず物神と化した象徴的なパワーワードです。

ディープラーニング型のAIも専門的にはいくつか種類があるようなのですが、世間を驚かせたAlphaGoでいうと、前提条件として大変重要な事は、囲碁には厳格なルールがあるという事です。

Alに囲碁のルールを覚え込ませ、全ての考えられる打ち手を計算させ、最善手となった手に高得点与えて、自己で対戦を繰り返す事によって賢くなっていくというのがAlphaGoのものすごく大まかな説明だと思うのですが、おそらくどういう手を打ったときに高得点にするのかというのが肝であると思います。

そして繰り返しになりますが、もっと根本的に重要なのは囲碁には明確なルールがあり、データは棋譜として100%取得可能であるという点です。

翻って今のビジネスは先が見通せないですし、新型コロナウイルスでさらに混沌としているような状況です。つまり、どうすれば勝てるかというのはルール化されていないというか、誰も答えを持っていない訳です。

仮にビジネスで勝つと定義しようとしたとして、ある人はシェアの拡大が重要だと言い、またある人は売上だと言い、そしてある人は利益率だと言うような状況が発生します。

そうすると大体において社内の力関係で定義が決まりというのがよくあるパターンですが、それが本当にその会社の勝ちを定義すべきふさわしい指標なのかは本当は誰も分からない訳です。

なので、全部が全部AIに仕事が奪われるというのは、物神的な考え方で、AIは定義がしっかり出来た事業のうちで、データも取れる分野での限定的な活躍しか出来ないはずです。

僕は人事系なので、採用についても考えてみます。これはいろいろな所で言われているので繰り返しになってしまいますが、弊社の人事データを掻き集めて巨大データセットを作り(まずこれだけで相当難儀なはずですが)、活躍している社員の特徴をディープラーニングで学習させて、採用に活用するというのは一見今風で反論の余地はないように見えます。

但し、これには大きな問題があって、弊社で採用されて活躍している社員の特徴を抽出している訳ですから、既存の採用プロセスの強化にしかならないのです。

一番知りたいのは、弊社に応募してくれて、不採用になったけれども他社では活躍している社員です。また、弊社には応募してくれないけど、もし来てくれたら活躍するであろう社員のデータです。

このような人物のデータは取りようがないので、大きな欠損値となる訳です。そうすると、仮にAIで採用/不採用を決めるプロセスを確立したとして、採用すべきだった従来の不採用者は引き続き不採用になる訳ですから、AI導入がむしろマイナスに働いてしまうかもしれず、弊社だとコミュニケーション能力が高く地頭のよい若手の男性社員が大好きですから(もちろんこのご時世これは如何なものかのいうのは言うまでもありません)、そういう人間を優先的に採用すべきというAIの判定となったとしたら、アホかという話です。

HRテックの最新の動向は追えていないんですが、既存プロセスの強化になってしまうのであれば、意味がないどころかむしろ有害です。

また、昇格のプロセスを考えた時に、年功序列で昇格させていると言うことであれば、いくらそのデータを学習させたとして、昇給は年功序列で行うという結果しか出て来ず、最先端の技術を使って典型的なガーベッジインガーベッジアウトをやってしまい、高いお金をドブに捨てるという事をやってしまいかねないと言う事です。

つまり、明確な哲学と科学に基づいた目標を設定し、忖度しない制度運用を行わない限り、AIで人事データを分析する価値はなく、逆にそれが出来てさえいれば、AIなぞいらないという事になると思います。

一方で、品質不具合など、センサー等で大量の客観的データを入手して活用出来る場合はAIを使用する価値があると思います。

纏めると、目標とルールが明確で科学的にも妥当だと考えられる対象範囲に対して、客観データを大量に取得出来る分野に限ってAIは有効だと考えます。

そうすると品質管理や製品のプライシングや故障頻度などでは有効かもしれませんが、AIは万能では無い事が容易に理解出来ます。

そろそろAIバブルも崩壊するのではないかなと個人的には思っています。